第一部
第一章
現実から虚実へ
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っとりと濡れた感触と、唇を侵食する粘性のある感触。
……指が。
イブの手によって、俺の指が俺の口に押し付けられていた。唇に触れているのは、イブの唾液の絡んだ指。
……これって。
「んぐッ!?」
瞬間、俺の唇に触れるだけだった指の、その腕にかかる力がまた一段と強まった。急にぐっと強まった力に対応するだけの時間はなく、そのまま唇を押し開いて俺の指は俺の口腔内へと……そして、俺の舌先へとその指を押し付けた。
……。
また言葉を失った。唇に触れるだけに留まらなかった俺の指。
「きょーや?」
「へ……?」
情けない声が漏れる。ボーっとイブの腕を眺めていた俺は、イブへと視線を向けた。と、その視線の先のイブの表情は優しげで、微笑を携えていて……。
「間接キス、好き?」
「……」
不意打ちのその一言。さっき俺がもしやと思っていた、その言葉を……イブはあっさりと言ってのけ、逆に俺はイブの口から出たその言葉に心臓が口からマッハで飛び出しそうになってしまった。
数秒ほど、俺の指を俺の口の中に突っ込んでいたイブ。ゆっくりと俺の腕を引き、俺の口からまた指を抜く。その俺の指は、今度はイブと俺の唾液が混ざり合った液体になって絡みつき、指を煌めかさせていた。
しかも何を思ったのかイブ。その俺の指を、今度はイブ自身の口元へと誘って……。
「え、まっ……!」
俺が止めるまでもなく、また再び俺の指を躊躇もなく咥えて、しかも今度は咥えた瞬間から、おもむろに舌を絡めて……。俺の指を舐り絡めとるように、何度も舌先を俺の指に這わせてくるイブ。
「ん……」
「あっ……!」
指から脳へと伝う、少し粒状の起伏がついたイブの舌の感触と、俺の眼前に広がるのは、表現のしようもない甘美で淫らな光景。
ダメだって、ほんとダメだってんのに……。
言葉にならない、俺の心からのつぶやきというか叫び。やめさせなければと思う気持ちと、やめさせたくない気持ちとの葛藤が生み出す、これまた妙な気持ちが全身を支配する。ある意味では天国で、またある意味では地獄のような時間……。
しばらくしてイブは小さな口を開き、舌を絡めていた俺の指をスッと引き抜いた。同時にさっきと同じようにイブの口から糸引くのは、イブ自身の唾液。でも、今回はイブのだけじゃない。俺とイブの二人の唾液が合わさり混ざりあって、俺の指とイブの舌、口に絡んでは糸を引いた。その感じが何とも言えず扇情的で、俺の心から脳を全て掻っ攫っていくには十分すぎる様相を見せつけてくれていた。
「イブ……」
俺はようやく解放された自分の強張っていた左腕を、力なく下へと重力に逆らうこともなく下げた。同時に地面にぶつかり、動きを止める俺の腕。俺自身、少しだけボーっとした頭に必死に鞭打って今までの出来事を思い返しながら、イブからは相も変わらずに視線を逸ら
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