暁 〜小説投稿サイト〜
Eve
第一部
第一章
現実から虚実へ
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ぁ……」
俺の手を添えるように掴むイブの手が誘うがままに、俺の手がさっきまで咥えられていたイブの口から抜かれる。瞬間、俺の指に絡みついた唾液とイブの舌と唇、歯とを結ぶ唾液が細長く糸を引き、柳の枝葉を透かした木漏れ日を屈折させて、キラキラと透明な線が煌めいた。イブの手に誘われる俺の手、指がイブの唇から距離を離していくにつれて、糸引く唾液は細く放物線のような形になって、草原を駆け抜ける涼風に靡いて……。それはやがて、イブのぷっくりとふくれた唇から白く柔らかそうな頬、細くしなやかな首元。白のレースと、どこまでも淡い空色のリボンが可愛らしい純白のワンピースの襟元を濡らし、そして汚した。
「……」
「きょーや……」
言葉なんて、そんなものは出てこなかった。出てくるはずもなかった。
可愛くて……そして、今のイブの全てがどこまでも官能的で……。俺の指に絡みついた、イブの艶めかしく光を乱反射させる唾液も……すごくいやらしくて。
もう、正座をしているこの体勢すらもつらいものがある。でも足を崩せないこの状況に、俺はどうすることもできない瞬間というものの存在を思い知らされた。
俺の視線はイブの口元や瞳。イブの口元からしばらく離れた、俺自身の人差し指とを交互に移動する。イブの視線は、ちらっと下を向いた。そのイブの唇と頬を汚すのは、糸引いて垂れた粘液。イブは俺の腕に添えていた手を離し、その甲で自分の口元から頬にかけてをそっと拭った。
……無理だって、こんなの。
イブが拭った手の甲は艶めかしく輝き、その手でまた俺の手を添えるように掴んでくる。そしてまたイブの為すがまま、誘われるがままに俺の腕は宙に浮いた。
な、何を……?
イブと俺を繋いでいた、俺の右手人差し指。もうこれで終わりかと思っていたけれども……どうやらそうじゃないらしい。
少しずつ。本当に少しずつ、イブに誘われるがままに俺の顔へと近づいてくる俺自身の、さっきまでイブの口腔内で舐り回されていた、俺の指。何をするのかとイブの表情を、限界を超えた心臓の鼓動を押さえつつ見据えれば、その顔はいたずら心に溢れた。それでいて、どことなく恥かしさも孕んでいるような。そんな不思議な表情をしていて……。
「い、イブ……?」
「……」
無言のイブ。俺の指と俺の顔との距離は……もう目と鼻の先で。もう何も言えなかった。この先の展開も……予想できてはいても、もう止めようとする理性は欠片とも微塵とも残ってないどいなかった。
「きょーや。」
きゅっと、俺の腕にかかる力が一層強くなって……俺の腕は俺の口元へと、一気に近づいた。
「ッ!?」
……そして漏れ出でる、言葉にならない声。いくら予想していたとはいえ、とてもじゃないけれども心の準備は追いついていない。
……。
俺自身の唇に触れる、細い俺の指。触れた瞬間に感じる、し
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