トワノクウ
第十五夜 雉は鳴かずとも撃たれる(一)
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が整列して前衛、中に潤が立ち、後ろには薙刀や刀を持った巫女が銀朱を囲むように控えている。
「今回の討伐はどういった目的で行われるんですか?」
「この辺は新政府肝煎りで開発が決まってる。妖には立ち退いてもらわないといけない」
「どんな妖がいるんですか?」
「邪魅というのがいるんだ。魑魅の類なんだが」
「京極ですね」
「そ、9巻目」
平和な会話に安心する。潤は森のほうを見据えて説明する。
「山ってのは無数の動物が生まれ死んでいく。時には人が死して魂が帰る場所でもある。そういった場所には自然と瘴気が生じる。澱んだ瘴気は、年月を得て形を成す。それが邪魅だ。吐く気に当てられれば高熱、魅入られれば精神錯乱、魂を食われれば廃人。ケモノは陰陽寮の管轄なんだが」
言うだけ言って潤はくうから離れた。くうも察した。空気が変わったのだ。澄んでいた夜気に粘りが混ざったように空気が重くなっている。これが妖が現れる際の感覚なのか。
「篠ノ女、先に言っとく」
潤は自らも刀の鞘に手をかけている。
「エサ扱いといったし、確かに銀朱様はそうあってほしいと願われている。でも、俺はそれだけじゃないから。俺はちゃんと篠ノ女空を守りたいと思ってるから。それだけ、分かっておいてほしい」
ひどい少年だ、とくうは思う。ないがしろにすべき存在に対して好意を向けるのがどんなに残酷か彼は分かっていない。
「来るぞ。離れるなよ」
「はい。お任せします」
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