18:冗談じゃない
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キミ……」
きゅ、きゅっ、きゅるー。
ピナは、ユミルの胸元へと突撃していた。いや、突撃と言うよりは、彼の胸の直前で制動をかけ停止し、そのブレストアーマーにコツ、コツと額を撫で付けているのだ。
まるで、甘えるように。
「ちょ、っと……キミ……わぁっ!?」
ついには、マフラーのようにユミルの髪を掻い潜りながら首に巻きつくように肩に飛び乗り、長い首を揺らして彼の頬に自分の額を摺り寄せている。その閉じられた口の喉元からは猫そっくりの、ごろごろと安心しきった機嫌の良い唸り声が聞こえてくる。
「キ、キミ……?」
うろたえているユミルに、シリカが歩み寄る。もしかすれば主人として嫉妬するのではないかと思っていたが、その予想に反して彼女の表情は、とても嬉しそうだった。
「えっと、シリカ……こ、この子は一体……?」
シリカはクスリと一度笑う。そして彼の頬元にあるピナの頭に手を伸ばして撫でながら口を開いた。
「あなたに恩を感じているようですよ。それに、単純にあなたを気に入ったんだと思います。よかったですね、ユミルさん」
「……そうなの?」
それにピナがきゅるっと頷くように鳴いた。
それからユミルはしばし驚いた顔で硬直し、やがて、
「…………そっか」
ユミルは真横へと目を滑らせ、小竜と視線を配し合った。
すると、その表情がフッと柔らかくなり……
――とても穏やかな、もしかしたら、それが彼の本質なのかもしれないという柔らかな笑みに変わった。
が、それも数瞬だけですぐに潜ませた。ユミルは首を包み込むピナを両手で優しくすくい上げ、胸の前に抱き上げた。ピナは羽ばたき一つ抵抗することなくされるがままに抱かれ、きゅる? と不思議そうに首を傾げている。
「……ありがと。だけどホラ、もう飼い主さんの所へお戻り。ね?」
その言葉を聞いたピナは、最後に長い首を伸ばしてユミルの頬を額で一撫でしてから、素直にシリカの肩へと飛び移った。
「……いい子だね。えっと……その子の名前は、確か……ピナ、だったよね」
その言葉に、シリカは満面の笑みで頷いた。
「大切にしてあげて。例えば――」
ユミルは、シリカの後ろ、隊列の先方を眺めた。
「――そこからじっと睨んでくる怖い人とかに、また襲われないように、とかね」
「え? ……あっ……」
いつの間にかシリカの背後で、デイドが二人と一匹を忌々しげに睨めつけていた。振り向いたシリカが瞬時に怯えて一歩退く。それに代わるようにユミルが一歩進み出、彼女の横に並ぶ。それと同時にピナも低い唸り声を上げる。
「テメェら」
「……キミも飽きないね。ついさっきもキリトに注意され
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