18:冗談じゃない
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《わずら》わがっているデイドの呟きが聞こえる。
ハーラインについては……もう、何も言うまい。俺も一人の男として、彼には同情の念を禁じ得ない。心の中で、なんとなく合掌。
「うわー……あいつ、ああなると別の意味で、また一段と気持ち悪くなったわね……」
「リ、リズ……聞こえたらどうするのよ。あんなにショック受けてるのに、さらに追い討ちになっちゃうよ」
先頭を務めているアスナとリズベットのヒソヒソとした会話もかろうじで聞き取れる。……ということは、ハーラインの耳にも……重ねて、南無と心の合掌を送る。
俺達は予定通り、朝方に出立した他チームとは別方向にマッピングを進めていた。モンスターとのエンカウント率が低いという情報の通り、幸い今のところ一度も敵には出くわしてはいない。ただ、確かに木々の間を毛細血管のように入り組む、獣道以上舗装道路以下の路地のマッピングには予想以上に苦労しそうだった。この階層のほとんどがこの始末なのだから、この先もずっと今のような遅々とした展開が目に見えるようだ。真っ先に挫折してリタイアした連中の気持ちも分からなくもない。
不幸中の幸いだったと言えるのは、先程シリカ達が話していた通り、視界は極めて良好だという点だ。
辺りは薄いディープブルーの明度で、木々や植物が鬱蒼と茂ってはいるものの、かなり奥のオブジェクトまで鮮明に見て取れるのは小さな仔馬を探す今回の目的にはありがたい。《薄光の森》という名は、どうやら当たらずも遠からずのネーミングなようだ。
と……
「……あっ!」
突然シリカが声をあげた。反射的に瞬時に索敵スキルを駆使しつつ辺りを見回してしまうが、この周囲一帯にモンスターが出てくる気配は無い。
驚かせないで欲しい、と内心溜息をつきながらシリカにどうしたのかと問おうと口を開けた瞬間、その原因が見て分かった。
きゅ、きゅる。
「ピナッ、大丈夫?」
彼女の腕の中で長い眠りに就いていたピナがようやく目覚めたのだ。名を呼ばれた小竜は主の声に元気に受け答え、いつものように肩に飛び移った。そして迷惑かけた、と言わんばかりに主人の頬に一度擦り寄る。
「あははっ、ピナ、良かった……」
シリカは安心した微笑みでその頭を撫でていた。ピナは心地良さそうに目を細めるも……その目が突如パチッと見開かれた。そして、
「きゃっ、ど、どうしたのっ?」
シリカの肩から飛び立ったかと思えば、一直線に誰かの元へと突撃していく。
俺は一瞬、ピナが再びデイドの元へと突進し、復讐のリベンジをするのではと危惧したが、幸い彼とは進行方向がまるで違っていた。
その向かう先は……
「……わっ!? な、なに、どうしたの?
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