SS:歩き出した思い出
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助かる代わりに、俺の眼前に川の水が広がっていた。
= =
「ごめんなさい!私STR振りだから・・・筋力差で投げちゃう形になったんだと思います!」
「あぁ・・・そういえばこのゲームは筋力と重量の概念が混同してるとかなんとか・・・」
つまり、筋力ステータスで彼女より劣っている俺は体格がどうであろうがステータスで勝る彼女に抵抗できない、という感じらしい。
あんなにあっさり川に落ちたのは、筋力差が大き過ぎたことが原因だろう。
俺のレベルは果てしなく低いのに比べて彼女は装備が整っている。装備が整っているという事はそれなりに戦っているということだ。
面倒くさいゲームだ、とぼやく。
幸いこの世界には窒息の概念が無いようなので水中でも慌てず堤防の方まで戻れた。
落下した人のための階段があるのは嬉しいが、水の感触が現実と微妙に違って気持ち悪い。そこまでは再現できなかったんだろう。
と、そこまで考えて俺はあることを主だし、慌てた。
「あっ、ギター・・・!」
ギターに湿気は天敵だ。川に落ちようものなら駄目になってもおかしくない。
慌ててギター(正確にはギターなのか分からないが)を取り出して――そういえば、持ち物欄という4次元ポケットに入っているのだから濡れる訳が無いという事実に気付いてガクッと肩を降ろす。
「身体ももう濡れてないし、なんだか得したのか損したのか分からないなぁ」
「あっ・・・そのギター!貴方もしかして噂の『吟遊詩人』さん!?」
「へっ?俺は詩なんか詠まないよ?路上ライブはしてるけど・・・・・・」
「じゃあやっぱり吟遊詩人さんだ!」
こちらのギターっぽい弦楽器に気付いた途端に女の子は上機嫌になった。
泣いたり謝ったりころころ顔の変わる子だ。
吟遊詩人というのは一部のプレイヤーが言い出した俺の俗称らしい。
基本的に名前は名乗らないのでギタリストの人で通っていたが、ファンタジー世界にギタリストという名前は似つかわしくないということで一部はそう呼んでいるようだ。
止めてほしいと頼んだら、歌ってくれたらいいですよ?と意地悪な笑みを浮かべられた。
ギターっぽい弦楽器に目を落とす。今日くらいかき鳴らさなくてもいいだろうと思っていたそれは、いつもと同じ重みで俺の手の内にある。自然とため息が漏れつつも、構えた。
「今日は歌わずにボーっとしていようと思ったんだけど、結局歌う運命か。君のおかげで連続記録更新になりそうだ」
「記録に立ち敢えて光栄です!」
皮肉か本気か判断がつかないのが何とも言えないもやもやを心に残す。
ふと、俺は彼女に質問した。
「君、何で泣いてたの?」
「・・・・・・貴方には関係ないでしょ?」
「ん、まあそうだな。悪い」
興味本位だったが不
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