第百七十八話 宴会その八
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「敵ならばな」
「降すだけですな」
「あの独眼竜にもな」
信長はこの呼び名も出した。
「会ってはおらぬが」
「それでもですな」
「感じるものがある」
「それ故に」
「降しそしてじゃ」
「その命はですな」
「奪うつもりはない」
それはしないというのだ。
「武田信玄や上杉謙信もじゃがな」
「どの御仁もですか」
「どうも思うのじゃ」
「と、いいますと」
「色のある家の者達はな」
武田にしても上杉にしてもだというのだ、そしてだった。
「伊達にしてもな」
「そういえば伊達もですな」
「水色じゃな」
「はい、伊達家の色は」
「そうじゃな、色がある家はな」
「天下に必要ですか」
「そう思うのじゃ」
だからだというのだ。
「伊達政宗もその命は奪わぬ」
「では家臣とされて」
「そうじゃ」
そのうえでだというのだ。
「天下に役立ててもらう、その力をな」
「猿夜叉殿と同じく」
「猿夜叉を失わずに済んでよかったわ」
長政のことをだ、信長は家康にしみじみとして述べた。
「浅井家自体もな」
「猿夜叉殿はよき方ですな」
「市を任せられる位にな」
自身の妹である彼女の婿にするだけのものがあるというのだ、長政には。
「それ故に市を嫁にやったしな」
「あの方にですな」
「久政殿は残念じゃったが」
「あの方も大人しき方であった筈ですが」
「おかしなこともあったわ」
「はい、まことに」
「あの髑髏も気になる」
久政の傍にあったこれもだというのだ。
「黄金色の髑髏なぞはな」
「それがしあの様なものは」
家康もその髑髏のことをだ、思いだしながらそれでいぶかしむことしきりの顔でそのうえで信長に話すのだった。
「一度たりとも」
「見たことがないな」
「邪気の塊の様でした」
「禍々しかったのう」
「はい、実に」
「あれは左道じゃな」
そちらの術のものだというのだ。
「わしはそう思う」
「それがしもです」
「どうやって作ったかはわからぬがな」
「左道に使うものなのは間違いありませぬな」
「それはわかる」
多くのことはわからないがというのだ、見ても。
「それはな」
「左道ですか」
「それで浅井家、猿夜叉を失うところじゃった」
「まことによかったですな」
「猿夜叉には随分と助けられておる」
長政は数多くの戦で武功を立て政も出来る、信長にとっては頼りになる妹婿であり重臣の一人であるのだ。
「だからな」
「それで、ですな」
「失わずによかったわ」
「まことに」
「浅井家の色は紺じゃ」
この家も色がある家なのだ、それでこう言うのだ。
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