第3章 揺れる想い
3-2 理解者
理解者
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「でもな、あいつも年頃の高校生や。あんさんを好きやっちゅう感情が、単に女のコに触りたい、抱きたいっちゅう思春期の一症状やないか、妹であるあんさんをエッチの対象としてしか見てへんのとちゃうかなって迷てるフシがあんねんな、これが」
マユミは独り言のように小さな声で言った。「それは……違うと思う。たぶん……」
「そのくせあいつは、あんさんの優しさにあぐらかいとるんとちゃうかな」
「……」
「あいつにいろいろ気ぃ遣うて、あれこれしてやっとるんやろ?」
マユミはうつむいたまま、少し拗ねたように言った。「あたし、ケン兄の喜ぶ顔が見たい。それだけだもん……」
「それは、たぶんあいつのためになれへんで。マユミはんのためにもなれへんけど」ケネスは人差し指を立てて続けた。「ケンジはあんさんのその気遣いを当たり前や、思い始めてんねん。思い上がりっちゅうかな」
「え? 思い上がり?」マユミは顔を上げた。
「もういっつも横にいて当たり前の存在になっとるやろ? 何しろ元々兄妹やし」
「……」
「ちょっと極端な表現でいやな言い方するとな、ケンジはあんさんを好きな時に自由にできる、思てるねん。意識しとるかどうかはわかれへんねけど。そやからいきなりマユミはんにつれなくされてめっちゃ動揺しとるんやろな」
「でも……」マユミはまたうつむいた。「あたし、ケン兄が疲れてるのに、無理にお茶に誘ったりしたの」
「ほう……ほんで?」
「ケン兄、部活でくたくただから遠慮するって言ったのに、あたし拗ねちゃって……」
「なるほどな」
「だからあたしも同じ……ケン兄はいつもあたしの思い通りに相手してくれるもんだ、って思ってた……」
マユミは切なげな瞳でケネスを見た。
ケネスは優しく微笑んでマユミの肩に手を置いた。
「マユミはんがそない思て後悔しとるんなら心配ないわ」
「え?」
「気の遣い過ぎやし、思いの伝え不足、やな。お互いに」
「……あたし、どうしたらいいか、わからない……」
「マユミはん、わいな、あんさんらに恩返ししたいねん」
「恩返し?」
「日本に来て、一番世話になり、一番のライバルやったケンジが苦しんどる。そしてそいつが大好きな妹もなんやもがいとる。これはもうわいが一肌脱ぐしかないやろ?」
「ごめんね、ごめんね、ケニーくん」マユミは眼に涙を溜めて震える声で言った。
「心配いらへん。わいに任せとき。気まずうて、よう話もできんあんさんに代わってわいがケンジに説教したるわ」ケネスは笑いながらそう言って立ち上がった。「そろそろやつが帰ってくる頃や」
ケネスはマユミの手を取ってその潤んだ目を一瞬見つめ、部屋を出た。
風呂から上がったケンジを待ち構えていたケネスは、彼が部屋に入ってくるなり言った。「ケンジ、おまえに言いたい事
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