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Chocolate Time
第3章 揺れる想い
3-2 理解者
理解者
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「何だよ」ケンジが無愛想な口調で言った。
「この部屋、女の子の匂いがするな」
「ぎくっ!」
「彼女、おらんはずやろ? ケンジ」
「い、いないよ、彼女なんか」
「つき合うてる女子、ほんまにおれへんのか?」
「いないって。神に誓って」
「誓わんでもええ」ケネスは鼻をくんくんと鳴らした。「なんでやろなあ……」ケネスはケンジの顔を見た。
 ケンジは目をそらして言った。「コーヒー飲むか? ケニー」
「おお、ええな。わいコーヒー好っきゃねん。ごちそうしてくれんの?」
「ああ。待ってな」

 ケンジは階段を降りた。丁度降りた所でマユミと鉢合わせをした。「マ、マユ……」
「コーヒー淹れた。今持っていこうと思ってたとこ」
「お、おまえの分も、」
「あるよ。でも自分の部屋で飲むから、気を遣わないで」マユミは自分のカップを手に持つと、二つのカップとデキャンタの載ったトレイをケンジに預けて、自分だけさっさと階段を昇っていった。


「なあなあ、ケンジ、」
「何だよ」
「お前、何で家に帰るなり機嫌悪くなんねん。何かおもろないことでもあんのんか? 家庭に」
「べ、別にないよ……そんなこと」
「それに妹はんも、何か怒ってるみたいなんやけど、気のせいかな」
「ああいうヤツなんだ。まったく可愛げのない」ケンジはぶつぶつ言ってコーヒーカップを口に運んだ。
「おまえら、ケンカしてるやろ。ホントはめっちゃ仲ええんとちゃう? こないだも街でデートしとったし」
「デ、デートなんかじゃない!」
 ケンジは自分でもびっくりするぐらいの大声を出した。
「何やの。そないに火ぃ吹いて怒る事かいな」
「だからどうでもいいだろ、妹の事なんか」

 ケネスは少し考えていた。そしておもむろに立ち上がった。
「ど、どうしたんだ、ケニー」
 ケネスは自分のバッグからごそごそと小さな箱を取り出すと、振り向いてケンジに言った。「仲裁したるわ」
「え?」
 ケネスはケンジの持っていたカップを奪い取り、無理矢理トレイに戻すと、それを持ってドアを開け、部屋を出た。
「ほれ、ケンジ、おまえも」
「よ、余計な事を……」

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 ケンジの焦りをよそに、ケネスはマユミの部屋をノックした。「すんまへん、ケニーです。ちょっとお邪魔してもよろしか?」
 しばらくしてドアが開けられた。「何か用? ケニーくん」
「一緒にお茶しまへんか? お土産もありますよってに」
「お土産?」
「そうです。カナダ土産のチョコレート。ほれ、ケンジも早う来んかい。ほたらお邪魔します」

 ケネスに促されてケンジはしぶしぶマユミの部屋に入った。

「ん?」
「な、何だよケニー」
 ケネスはまた鼻を鳴らした。「この部屋、ケンジの部屋と同じ匂いがすんね
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