第10話 10年来の天才
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ドボーンというのは原作では絶対に見ることはない絵面だろうなと、俺は妙なことに感心しつつワイドボーンを眺めていると、その本人が顔を寄せてきて小声で話しかけてきた。
「そういえば来月卒業式ですが、“ウィレム=ホーランド”なる五年生から、パーティーのお誘いがあったんですが、いかがしましょうか?」
「……なんのパーティーだか知らないが、俺の手元にはそんなお誘いは届いていないがね」
俺は小さく舌打ちしてそれに応えた。パーティーというのは大なり小なり候補生だったら開く自由はある。だいたい週一休暇の前日夜とかに、親しい友人やクラブ活動の内輪で開くことが多い。校外との交流があるクラブや、クラブOB(士官の多数はみな“士官学校OB”なんだが)主催となると、外のホテルやレストランで開かれることもある。そこで将来有望な士官候補生を紹介(or捕獲)したい側と、若い女性の関心や有力者の支援を得たいと思う士官候補生側の需要と供給が成り立つのだ。学校としても風紀が乱れる心配から、そう多くの回数を開くわけにもいかないが、規則に則っているならば社交教育の一環になるだろうと黙認している。
だが最上級生で、実習や演習でなかなか学校構内にいない“ウィレム坊や”が、直接面識のない学年首席のワイドボーンを誘っているというのは、何となく目的が透けて見える。
「では、欠席した方がよろしいですか?」
「それはお前の勝手だ。お前が決めろよ。行って見聞を広めて来るもよし、図書ブースで昼寝するもよし」
「先輩は“ウィレム坊や”の事をお嫌いだと、ウィッティ先輩から聞いていますが?」
「嫌いだ。向こうも俺の事を目の敵にしている」
俺ははっきりとワイドボーンに言ってやった。
「だがお前は誘われたんだ。行って“ウィレム坊や”の顔を見てこい。ついでに話をして来ればいい。相手も学年首席だ。なにか参考になるようなネタもあるかもしれない」
ここまで角の取れたワイドボーンが、ホーランドの閥形成パーティーに行って、そのまま取り込まれてしまう可能性はある。それを惜しいとは思うが、本人が俺にこういう事で許可を求めるような真似をしていることが、ワイドボーンにとって決して良いことではないはずだ。指揮官の性格としては、独善的な決断をすることの方が優柔不断で上司の顔色を伺ってから決断するよりも、まだマシな事が多い。
「そうですね。じゃあ行ってきます。会場はレストランのようですから美味しそうな夕飯にありつけそうですし」
「ワイドボーン」
俺は心配性だと思うが、一言いっておかずにはいられなかった。
「俺の目から見てもウィレム=ホーランドという男は極めて優秀だ。敢闘精神にあふれ、決断も早いし、決断した後の行動力は賞賛に値する。常に自信と誇りを持ち、指揮官としての能力は俺より数段上だろう」
嫌
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