第6章 流されて異界
第100話 魂の在処
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、彼女にも魂があるのでしょう。それでなければ、俺と式神契約を交わす事が出来ませんから。……が、しかし、彼女自身が発して居る気は酷く希薄な雰囲気。資料に因ると、本来の長門有希と言う存在は、俺たちのような魔法に立脚した存在と言うよりは、表の世界の科学技術では未だ再現不可能な超絶科学により誕生した存在。
そして、基本的に科学に立脚した存在が造り上げる人工生命体に、最初から魂と言う存在を定着させる例は聞いた事が有りませんから……。
おそらく、彼女……長門有希と言う少女型の人工生命体は、魂魄と言う物を完全に理解して居る訳ではないでしょう。
それならば、
【人間の記憶の方法と言うのは、ゼロとイチの科学に裏打ちされた至極一般的な方法と、それ以外。例えば、前世の記憶などを突然、復活させるような、科学では証明出来ない方法との二種類が存在している】
少し意味不明の内容を話し始める俺。但し、朝比奈さんが俺の事を記憶している理由がコレだとは思うのですが……。
【そして、朝比奈さんが俺の事をおぼろげながらも覚えて居る理由は、おそらく後者の方。本来、有り得ない歴史上で発生した事件である以上、俺の事は彼女の中には残るはずがない記憶。人間に用意されたのが科学に立脚した記憶方式……脳に記憶するだけだった場合は、この有り得ない記憶は忘れ去られて、新しい歴史が産み出したその夜の記憶に因って上書きされるだけやったはずや】
元通りの歴史の流れに戻された後に上書きされた記憶。五月の事件が起きた夜に彼女、朝比奈みくるに何が有ったのかは判りませんが、おそらくは平和な夜が終わって普通の朝が訪れる、そう言う日常が繰り返された記憶で上書きされたのでしょう。
それでなければ、ハルヒがわざわざ世界を改変するとは思えませんから。
【せやけど、人間にはもうひとつの記憶を止めて置ける個所が存在していた。それが魂と言うあやふやな……存在を科学的に証明する事が出来ない部分。この部分に刻まれるのはその人物に取って非常に強い思いを持つ記憶。例えば、自らの生死に関わるような強烈な物は残る事が有る】
本当はもっとランダム。何事もない日常の一場面が残る事も有るようなのですが、矢張り衝撃的な記憶が残る可能性の方が大きいらしい。
自分自身の経験則から言わせて貰えるのならば……。
もっとも、現在の生命で経験した出来事に因って思い出す度合いも、そして内容も変わるようなのですが。
【彼女に取っては、その五月の出来事。本来の平凡な日常に因って上書きされた記憶の方ではなく、俺と出会った記憶と言うのが、自らの生命の危機を回避する事が出来た経験、と成ったと言える。
この経験が魂に刻み込まれたとしても不思議ではない】
見つめ合うでもなく、長門さんはその視線を自らの手に
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