第6章 流されて異界
第100話 魂の在処
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か俺が彼女に対して思考を向けた事に気付いた訳ではないのでしょうが。
そう、妙な雰囲気……。何と言うか、見た目の印象から言うと、長門さんに相応しい雰囲気――躊躇いのような気を纏って。
「何や、ハルヒ」
何の遅滞もなく答えを返し、少し腰を浮かせて彼女の方向……。長門さんよりも更に向こう側に位置する団長用の席。何処から調達して来たのか判りませんが、教師用の事務机に着くハルヒの方向に向き直る俺。
その俺の答えを聞いて、躊躇いを振り払うかのように――非常に男らしい勢いで立ち上がったハルヒ。立ち上がった勢いで、彼女の座って居た車輪付きの椅子が背後の壁に当たり、かなり大きな音を立てた。
しかし、一度思い切った彼女がそんな些細な事に気を留める事もなく、立ち上がった勢いのまま真っ直ぐに俺の方向に三歩進み、
「あんた、これに覚えはある?」
何故か少し怒ったように右手を差し――突き出しながら、そう聞いて来るハルヒ。
但し、その強い視線は……と言うか、何故か顔毎そっぽを向き、俺と絶対に視線が合わない位置に固定した状態で。
何と言うか、この手の少女にお約束な挙動不審の態度に終始するハルヒに対して、口元にのみ浮かべる類の笑みを浮かべながらも、その差し出された拳の先を眼で追う俺。
其処には……。
かなり強い勢いで差し出された為、握り締めたチェーンの部分からぶら下がった物体が、肉眼ではしっかりと感じる事の出来ない瞬きを続ける人工の光を反射しながら大きく揺れていた。
これは確か……。
「今年の春。オマエさんに会えなくなる直前の二月十八日に、図書館の司書に預けて行った首飾りやな」
ごくシンプルな……。十字架に掲げられた救世主の姿すら象っていない、単なる十字の形をした銀製と思しき首飾りを見つめながらそう答える俺。
但し、当然これは俺が彼女に渡した物では有りません。この首飾りを用意したのは俺の異世界同位体。
今年の五月。ゴールデンウィーク明けに起きた事件。黒き豊穣の女神としては至極もっともな能力の発露に因って、この世界が危機に陥った事が有る……らしいのですが。
黒き豊穣の女神シュブ・ニグラスとは神々の母と呼ばれる存在。一度現われると、その元々存在していた世界を破壊。そして長き眠りに就きながら、自らの子供たちを産み落とし続け、新しい自分の世界を作り出すと言われている神性。
その事件を解決する為にハルヒの夢に侵入した俺の異世界同位体が、夢を見続けながら新しい世界を創造しようとしたハルヒが元の世界に帰還する気持ちを起こさせる為に、自らが魔法使いである事を明かした上で、その証拠として……この夢の中の再会が、自らの脳ミソが産み出した夢幻の絵空事でない証を立てる為に、出会った図書館にハルヒ宛てのプレゼ
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