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蒼き夢の果てに
第6章 流されて異界
第100話 魂の在処
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広げた書籍に。俺は、彼女の後ろに立つハルヒと、その横に並ぶ朝比奈さんの方向に視線を向けながら続けた会話を終える。

 ただ……。
 ただ、俺自身としてはそんな悠長な――。朝比奈さんが俺の事を覚えてくれて居て良かった、などと浮かれて居る訳には行かない状態なのですが。
 いや、この部分に関しては、おそらく長門さんも同じ気持ちだと思いますね。
 何故なら、現状の世界は非常に危ういバランスの上に成り立っている世界だから。未だ俺のような存在が必要とされる状態が、安定したとは言い難い状態でしょう。その中で、風前の灯状態と成りつつある朝比奈みくると言う名前の少女の扱いをどうするか。その辺りに問題が出て来ましたから。
 彼女の以前の立場。元々、この世界に生を受けた存在などではなく、異世界の未来。過去を改変しなければ、彼女の生まれた世界へと帰る事の出来なく成った時の異邦人。普通に考えるのなら、そんな彼女は危険視せざるを得ない立場の人間です。少なくとも、俺がそれなりの組織のトップならば危険な因子は早い段階で処分する決断を下すでしょう。
 彼女が元の自分の目的。この時間にやって来た本来の目的。時間監視員の仕事を行い、再び、自分の生まれた時代を取り戻そうと行動を開始すると考えるのならば……。

 それに、もし俺が報告しなくても万結か、保護観察中に等しい立場上、報告しなければならない長門さんが水晶宮の人間に対して報告をするから、ここで俺が彼女を見逃したとしても意味は有りません。

 まして、この問題は水晶宮の人間だけの問題ではなく、この世界に暮らす生きとし生ける物すべての問題。クトゥルフの邪神の顕現と言うのはそう言う問題。
 ハルケギニア世界でも異界化した空間にクトゥグアの触手が顕現しただけで、大変な被害が発生したのです。それが、通常空間に本体が丸ごと一柱分顕現したと考えると……。

 そんな危険な未来を招きかねないのです。朝比奈みくるが記憶を取り戻して仕舞うと言う事は。

 かなり難しい判断を為さねばならない、暗澹たる気分に陥りつつある俺。これでは、ごく一般的な高校生の日常生活など夢のまた夢。
 そう考え始めたその瞬間、

「朝比奈さんもそうだったのですか?」


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