家族からのFAを検討中
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くの?」
「それを確認するための三者面談でもあったはずなんですけどねえ、去年の夏に顔見せた方は何も覚えてないようだから……」
結月の問いに、珠希は嫌味ったらしくゼリーを頬張る母親を恨めしくにらみながら答える。
「まさかおねーちゃん、この家出るとか?」
「さあね。それを含めて全部検討中」
「それは私としては困るなあ」
「お母さんもよ」
大学進学に伴う珠希の一人暮らしの可能性が浮上したことで、まったく家事に参加してくれない女二人が口を尖らせる。
なぜならこの竜門家のシステムキッチンも冷蔵庫も掃除機も洗濯機も、ほぼすべて珠希の希望・要望で揃えられている。細かく言えば庭に散布する除草剤や衣類用洗剤の買い置き、食器棚内部の食器の配置まで珠希が決めていて、土倉内部の整理に至るまで珠希がやっていたことすべてが一気にのしかかってくるからだ。
そこまでやってのける女子高生のほうが凄いとは思うが、もはやこの家事万能娘にそんなツッコミは野暮というものだ。
「そんなに嫌ならお兄ちゃん呼び戻したら? この家からだって車使えば都内のスタジオには通えるでしょ。それでもって言うんなら大海伯父さんとか呼べばいいじゃん」
「アニキをか?」
「お義兄さんは勘弁してほしいなあ、お母さんは」
「私あの人厳しくて嫌いなんだけど」
珠希が伯父――父の兄――にあたる竜門大海の名前を出した途端、彩姫と結月の顔がそろって渋くなった。しかも実弟の大樹の顔までも。
しかしながら、珠希は三人が顔をしかめる理由もわからないでもない。何がどうしてあんな伯父の弟があんな父親なのか、外見は父同様に若く見える珠希の伯父は現在、県の教育長なんて因果な仕事に就いている。
本当、何がどうして教育長殿の弟が娘に仕事の一端を依頼するようなことをしているのか――。
「珠希。本当にお前には負担かけっぱなしで申し訳ない」
「え? いや、今さら?」
謝罪などもはや珠希には不要であった。少なからず家庭が裕福なこともあったおかげで家事スキルを万遍なく鍛えられただけあって、もう一人暮らしするのに不安などないくらいだ。その点ではむしろ感謝こそしている。
ただし、謝罪される点においては心当たりが多すぎて迷うのも事実だった。
「お母さんからも、ごめんなさい。確かに幼い頃から珠希ちゃんには負担かけっぱなしだったわ。執筆の資料だからって理由つけて、亀甲縛りの練習台になってもらったりとか結月ちゃんとカラミさせたりとか――」
「うわぁぁぁ! それは黒歴史だからやめてぇぇぇッ!!」
「お母さん。それは私にとっても黒歴史なんだけど」
さらっと衝撃発言を吐き出す彩姫に、結月はあきれ顔だったが、珠希は思わず叫
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