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のために、また高度をとった。
滑走路から追跡機のP−80が離陸し、それに続いた。試験は6000メートルで行われる予定だった。見上げた空にポツンと黒い点となった2機が見える。
「まだ続きそうだ。どうします? 商談なら宮崎の本社でもいいですし、どうせなら防衛技術研究所の研究室でも私は行きますよ」
「次の発射実験は?」
裕也が眉をそばだてた。高嶋少佐が右手で制帽をいじり、得意げな表情で鼻を掻いた。
「私の手元には、情報が集まりますから。航空局への届け出は、軍内で共有されますし。国内だけではありません。アメリカ、イギリス、ドイツの開発状況も、手に取るようにとは行きませんがある程度は集められます」
「なるほど……ああ、ではご存じなのでは。日付どころか、次の実験の内容も」
「新田原基地をお借りすることは耳にはさんでいます」
「そこまで知っているなら、後のネタは現地で確認した方がよいでしょう」
テントの方からまた歓声が上がった。上空を見ると、3つの小さな機影が飛翔している。追跡機を務める直線翼のオーソドックスな垢抜けない機体、P−80が徐々に取り残され、後退翼の機体が先行し、その後ろをエンテ翼の機体が追いかける。
碧雲が広がる空に、三条の飛行機雲がたなびいていた。
1950年2月14日0700.
甲高いタービン音が聞こえてきた。
「おい! 頭隠せ、また奴らが来るぞ」
兵士たちが前線の蛸壺に身を収めるために装備一式を担いで駆けてゆく。上空では中華ソビエトがソ連から供与されたらしい後退した主翼をもつ新型を投入していた。後方からやはり聞き慣れた、味方戦闘機のエンジン音が響いてきた。
P−80が400メートルの距離で、対空噴進弾を発射。散布界に敵の姿はない。むなしく上空に爆発の花が咲く。敵の新型機は異様に小回りが利くらしい。さらに速度性能でも、頭一つぬきんでていた。
そのため、国連軍の戦闘機は不利な制空戦闘を繰り広げねばならず、新型機の後方から前線に向けてイナゴのように異常な数で迫ってくる水冷エンジンの襲撃機、Il−2を叩き落とすことができないでいた。
襲撃器の群れは前線に到達すると、上空で繰り広げられる制空戦闘など尻目に、低空で侵入し、250キロ爆弾の雨を降らせ、機関砲の嵐を浴びせかけた。
「ちくしょう、高射砲大隊の奴らは何やってんだ」
蛸壺で身を縮めている兵士の1人が叫んだ。隣の蛸壺を機関砲の火線が通り過ぎる。思わず頭を抱えて亀のように身を固くする。巻き上げられた砂塵が呼吸器に入り込み咳き込んだ。土砂が体の上からかかってくる。
飛翔音が遠くに去った。身を起こすと、視界が広がる。
背中から流れ落ちた土砂と一緒に、ごとりと何かが落ちた。
砕かれた人体の一
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