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働が精いっぱいであった。
それでも、国産技術の継承や新たな同盟国であるアメリカとの駆け引きに利用するため、開発は継続することが決まっており、今回の試験飛で選ばれた機体と共に、次期主力戦闘機事業に候補機として提案される予定だった。
「もう巴戦の時代ではありませんね」
そんなことを高嶋少佐が上空を見上げながらつぶやいた。滑走路から軽やかに離陸した僚機は、プロペラ機に見慣れた軍の人間に驚嘆の声を上げさせながら上昇し、高度4000メートルで模擬空戦を行っている。
正面投影面積の小ささからか、上昇速度で優越する<蒼雷>が<火龍>の頭を押さえつけるように急降下して銃撃――もちろん模擬弾――を加えると、後退翼の存在から直線加速に優れた<火龍>がラダーを翻してそれを回避し、降下していく<蒼雷>の背後に取り付いて追撃する。
「蒼雷は思ったよりも小回りが利くようですが、一撃離脱に徹していますね」
裕也はよく見知っているほうの機体を評価するだけに留めた。
背後からの銃撃を左旋回で回避した<蒼雷>がまた上昇に転じる。<火龍>は追撃を続行。上空からの降下で稼いだ速度を上昇力に変換して<蒼雷>に追いすがり、先ほどの一航過で劣っていることが分かった上昇力を補ってみせた。
鋭く機首を翻した<蒼雷>が、裕也の思ったよりも小さな旋回半径で反転する。一閃、銃撃と機影が交錯し、両機に塗料が付着する。こんどは上をとった<火龍>が上空から逆落としに<蒼雷>へと襲い掛かる。
「重戦闘機嗜好と言うのでしょうか。第2時大戦の後半から大馬力のエンジンを積んだ大型戦闘機の採用が増えました。その機体は機動性という点では、従来の機体に劣りましたが、それ以外の面ではすべてにおいて優越しました」
水平飛行に移った<蒼雷>のエンジン音が一際甲高く響いた。上空からの射撃を右旋回で回避、さらに追いすがる<火龍>の射線を低空飛行で掻い潜る。設計元の震電が高高度迎撃機として設計されていたことを考えると、良好な低空性能であるように地上からは見えた。
左右に翼を振る<蒼雷>に<火龍>が覆いかぶさるように上を取って、その機動可能位置を奪い取ろうとする。瞬間、<蒼雷>が機首を上げた。改設計で面積を広く取られた主翼が揚力を生み出し、機体を大きく浮かび上がらせた。機位を下げて攻撃位置を取っていた<火龍>は反応が間に合わない。<蒼雷>が天頂方向へ上昇し、反転。機首に4門、集中装備した35ミリ機関砲を掃射し、<火龍>を赤で染め上げてしまった。
「ああ、終わりました――各国が重戦闘機を揃えた今、また運動性能が重要になったようだ」
「運動性だけでは、まだ。積載能力、航続距離、それから政治が決めるでしょう」
「確かに」
空戦戦技試験を終えた2機が、速度性能の試験
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