第四章
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「誰も来ようとしませんよ」
「そうか、折角秘策を用意しているのにな」
「秘策も相手が来ないとどうにもならないですよね」
「それはな」
「どうするんですか?」
それでと返す北川だった。
「秘策といいましても」
「だから蜘蛛を見てもらうのじゃ、害虫を食べる姿をな」
「害虫って」
「ゴキブリとか蠅とか毒蛾をのう」
「それ余計にアウトですよ」
「余計にか」
「はい、女の子にトラウマを植えつけますよ」
その秘策では、というのだ。
「女の子はゴキブリとかも嫌いですから」
「そういえばそうか」
「そういえばじゃなくて蜘蛛と一緒ですよ」
どう一緒かというと。
「生理的嫌悪感を抱かせますから」
「ゴキブリもか」
「不潔ですし」
「では駄目か」
「駄目というかしかもゴキブリとかを蜘蛛に食べさせるんですよね」
「餌として買っているしな」
南城の研究室の蜘蛛達の餌はゴキブリだの蠅だのである、だから蜘蛛達がそうした虫達を食べている姿を見せることも出来るのである。
「いいと思うが」
「思うじゃないですよ」
「駄目か」
「苦情来ますよ、そんなの見せたら」
「そうか、ではこの秘策はな」
「蜘蛛はその捕食の姿も怖いんですから」
「ミズグモでも駄目か」
「珍しいですけれどね」
綺麗な水にしかいない、本当に珍しい蜘蛛だ。
「その捕食とか巣も」
「あれを飼っているだけでも凄いと思うが」
「蜘蛛は蜘蛛ですから」
「駄目か、ミズグモも」
「ジグモもクサグモもですよ」
とにかく蜘蛛ならば、というのだ。
「タランチュラなんか特に」
「あれは噛まれたら痛いだけだがな」
「大きくてしかも蜘蛛の中でも特に不気味ですから」
そうした外見だからだというのだ。
「余計に悪いです」
「ゴケグモはおらんがな」
南城の研究室にもだ。
「流石にあの種類はな」
「禁止されてますからね、持つこと自体が」
「毒蜘蛛の中でも強力だからな」
クロゴケグモ等は実際に噛まれると死ぬ、アメリカでは毒蛇よりもこちらの方が怖いとさえ言われている程だ。
「あれだけはな」
「そうですね、とにかくです」
「蜘蛛は女の子には好かれないか」
「まず」
北川はこう南城に話した、実際にだった。
彼の人格はともかくとしてその研究対象は嫌われ続けた、その結果彼の周りには女の子はいないままだった。だが。
ある生物学部の女の子がだ、彼の研究所について同じ理系女子達にこんなことを言った。
「蜘蛛教授の研究所だけれど」
「ああ、南城教授ね」
「蜘蛛教授の」
これがそのまま仇名になっている。
「あの研究所がどうしたの?」
「噂じゃ蜘蛛が何千もいるんでしょ」
「世界中のあらゆる種類の蜘蛛が」
「想像するだけで気持ち悪い
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