第五章
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「私とのお付き合いではなかったわ」
「それはひょっとして」
その話を聞いてだ、そしてだった。
インタヴューをしている記者の一人がだ、こう言ったのだった。
「貴女のお人柄のせいですね」
「私の?」
「はい、私達も貴女とは普通に。和やかにお話が出来ます」
「そうだよな、確かに」
「この人とはな」
「世界的なプリマ=ドンナでもな」
「特にな」
緊張することなくだ、和やかにインタヴューが出来るというのだ。
「普通に」
「そう出来ますから」
「これはやっぱり」
「貴女のお人柄のお陰です」
「そのお陰です」
「何といいますかね」
その彼女の具体的な人柄についても話される。
「穏やかで気さくで」
「しかも飾り気がなくて」
「お話しやすいんですよ」
「一緒にいると自然に和みます」
「そうした方ですから」
「だからコレッリさんもですね」
その何かと難しかった彼でもだったというのだ。
「和やかにお付き合い出来たんですよ」
「ですから貴女もコレッリさんには悪い印象とかないんですよ」
「普通にお話出来たんです」
「冗談まで言い合えた位に」
「コレッリさんじゃなくて私に理由があったのね」
記者達からの言葉を聞いてだ、歌手は気付いた様にして言った。
「そうなのね」
「そうだと思いますよ」
「人と人の付き合いの流れはお互いの資質が関わってきますから」
「ですから」
「コレッリさんは貴女の雰囲気とお人柄でそうなってたんです」
「貴女とは」
コレッリがそうなっていたというのだ。
「ですから貴女もコレッリさんには悪い印象はない」
「そういうことだと思いますよ」
「そうなのね。そういえば私が悪い印象を持っている人は殆どいないけれど」
このことはカラヤンにしてもパヴァロッティにしてもだ、特にカラヤンは今も何かと言われることのある人物であるが。
「それは私に理由があったのね」
「そういうことだと思います」
「貴女にこそ理由があったんです」
「コレッリさんが貴女には穏やかで神経質でなかったのは」
こう彼女に話す記者達の雰囲気も穏やかで和やかなものだ、そうしたことを話してそのうえでインタヴューを進めていた。
そしてだ、そのインタヴューの後で。
歌手が家に帰ると電話がかかってきた、それに出ると。
パヴァロッティからの電話だった、彼女はその幼馴染みで舞台でもよく共演している名テノールの話を聞いた。
「実は最近困っていてね」
「あらお兄さん、どうしたの?」
歌手は彼にも気さくで和やかな態度で応じる、そうしてパヴァロッティは彼女と親しく自分のことを話すのだった。彼女のその雰囲気に影響されて。
打ち解けて 完
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