第三章
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「その彼と初対面であんなに話せるなんて」
「だから私は特にね」
「コレッリに悪い印象は受けなかったんだね」
「ええ、そうよ」
その通りだとだ、歌手は鏡のところに置いてある舞台で使う小道具をチェックしながらマネージャーに応えた。
「別にね」
「凄いね、それはまた」
「ルチアーノお兄さんもあれでね」
ここでくすりと笑ってだ、歌手はこの幼馴染みのことを話した。鏡にそのくすりと笑っている顔が映し出されている。
「結構我儘よ」
「そうらしいね、パヴァロッティも」
「結構軽い理由で舞台キャンセルするでしょ」
「まあね、時々ね」
二日酔いなり何なりの理由でだ。
「そうしたところがあるね」
「お兄さんは昔からなのよ」
それこそだ、子供の頃からだったというのだ。
「やんちゃでね、小さな暴君みたいだったのよ」
「パヴァロッティは昔からパヴァロッティだったんだね」
「そう、だからね」
「君は多少の我儘はなんだ」
「平気よ」
にこりと笑っての言葉だ。
「別にね」
「凄いね、だからコレッリもなんだ」
「悪い人とは思わないわ」
特にというのだ。
「このまま仲良く出来ればと思っているわ」
「そうなればいいけれどね」
マネージャーは不安を覚えながら彼女に応えた、だがこの舞台の上演の間。
彼女とコレッリは特に衝突することなく仲良く舞台を進めていった、舞台の上では息の合った演技を見せて。
舞台を降りてもだ、歌手はコレッリに笑顔で声をかけられた。コレッリも彼女には笑顔で応え。
冗談も言い合い和気藹々としていた。これにはマネージャーだけでなくスカラ座のスタッフ達も驚いて言った。
「おいおい、コレッリと仲良くしてるよ」
「いつも誰かと揉める人なのにな」
「ああ、カラスともテバルディとも揉めたしし」
「メトじゃ凄かったっていうしな」
メトロポリタン歌劇場での話は遠くイタリアまでも伝わっていた、そこまでコレッリの難しさは有名になっているのだ。
「それでもな」
「ああして仲良く出来るってな」
「凄いな、あの人」
「普通じゃないぜ」
「器が大きいのか?」
「まだ若いのにな」
彼等もこう言うのだった、そしてだった。
コレッリもだ、彼女についてこう言うのだった。
「いい娘だね、あの娘は」
「そういえば今回の舞台リュー役のあの娘と息が合っていましたね」
「舞台を降りても仲がいいとか」
「うん、いい娘だよ」
周囲やマスコミにも言うのだった。
「あの娘はね」
「ではですか」
「彼女とはこれからも」
「友達でいたいね」
コレッリは笑ってこうも述べた。
「ずっとね」
「いや、コレッリさんがそう言われるとは」
「珍しいですね」
「普段他の人のことをそう仰らないのに」
「それ
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