第五章
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「その様なことは」
「では金は御主が出すのか」
「そうするというのか」
「はい」
相手を上機嫌にさせる為にだ、ここは自分が金を出すことにしたのだ。
「左様です」
「ふむ、御主がそう言うのならな」
「それならな」
イエニチェリ達も彼が自分からそう言うのならだった、断る理由はなかった。
「その言葉に甘えさせてもらう」
「そうさせてもらう」
「有り難うございます、、それではお店は」
「いい店を知っている」
イエニチェリの一人がこう言ってきた。
「この市場の近くのだ」
「このすぐ近くですか」
「うむ、飲み屋がある」
そこだというのだ。
「そこに入ってな」
「そうしてですね」
「そうだ、飲もう」
こう言うのだった。
「美味い店だからな」
「料理もワインもな」
「だからそこに行こう」
「そして飲み食うとしよう」
イエニチェリ達の方から言ってだった、子爵とヒメルスは彼等と身分を隠したうえで話をすることになった、店は本当に近くにあった。
そこに入るとだ、すぐに見事な馳走が出て来た。
白いパンにハリーサという小麦のポタージュ、ビスタチオで太らせた若鶏に香辛料を相当につけて焼いたもの、バターで揚げて蜜をかけた三角のドーナツにアーモンドと菓子、それにワインとだった。ヒメルスはもう一つの羊肉と小麦粉、酢で作った料理を見て目を丸くさせて言った。
「あの、この羊肉のものは」
「鶉も入っていますな」
子爵も驚いて言う。
「これは一体」
「うむ、これはシクパージという」
イエニチェリの一人がその料理の名前を言った。
「本来はアラビアの料理だがな」
「この都でも食べらているのだ」
「このイスタンプールは世界中から人が集まって来るからな」
「それでアラビアの料理もなのだ」
「左様ですか」
「いや、しかし」
ヒメルスはパンやワインも見て驚いている。
「立派なパンにワインですね」
「いや、だからトルコでは普通だぞ」
「我が国ではな」
イエニチェリ達は笑ってその彼に話す。
「この店は安いぞ」
「市井の料理の店だぞ」
「ペルシャでは知らないがトルコではな」
「ありきたりの店だが」
「こんなパンを出してもですか」
ヒメルスは欧州、特に彼の祖国であるスペインの事情から言うのだった。
「普通ですか」
「そうだ、この白いパンもな」
「ありきたりだな」
「それは凄い」
ヒメルスは唖然としたままの顔で応えた、彼はトルコのこの豊かさ、市井の料理ですら欧州のそれを圧倒しているそこからトルコの強さを再認識した。国力から軍隊の強さが来ることはよくわかっていることだからだ、彼等にしても。
子爵も同じだ、だがそれを言葉に出さずにだ。
そのうえでだ、イエニチェリ達に言うのだった。
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