第二章
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「それでは」
「頼むぞ、何しろだ」
「イエニチェリがですね」
「あの国の中で最も恐ろしいものだ」
「恐ろしいまでの強さですね」
「あの国は強い」
皇帝もだ、このことは嫌になる程わかっていた。
「教会やフランスよりもな」
「我等にとっての驚異ですし」
神聖ローマ帝国はフランスを圧倒し教会即ちローマ教皇にも優位に立っていた。しかしオスマン=トルコにはだったのだ。
劣勢に立っていた、国力が違ったのだ。
そしてその中心にだ、イエニチェリがいたのである。
「だからですね」
「敵に勝つにはな」
「その敵を知ることですね」
「そうだ、出来るな」
「お任せ下さい」
子爵は皇帝の言葉に強い声で応えた。
「必ずや調べてきます」
「彼等のことをな」
「はい、それでは今から」
トルコに向かうとだ、子爵は皇帝に一礼してからだった。
すぐにトルコに潜入した、目指す場所は帝都イスランプールだ。かつてはコンスタンティノープルと呼ばれた街にだった。
そこに従者のハイメ=ヒメルスと共に入った。ヒメルスはそのイスタンプールの中に入ってそれでこう言ったのだった。
「噂は聞いていましたが」
「凄いな」
「はい、この様な街はです」
どうかとだ、彼はこう主に言うのだった。見れば人が多く市場は賑わっている。様々な肌や髪の色の者達が行き来している。
ものも様々だ、その街並みはというと。
「欧州の何処にもありません」
「全くだな」
「はい、これがトルコですか」
「トルコは確かに強い」
子爵もこのことはよくわかっている、彼は決してトルコを異教徒の蛮人などと侮ってはいない。そうした者ではない。
「その強さはな」
「相当ですね」
「国力がそのままな」
「強さになりますね」
「だからトルコは強いのだ」
「豊かであるが故に」
「まずそれがある」
トルコの強さの理由には、というのだ。
「国力があり人が多い」
「人が、ですね」
「トルコ軍の数はそなたも知っておろう」
「はい」
ヒメルスは強い顔で主の言葉に頷いて応えた。
「欧州ではとてもです」
「あれだけの数はな」
「集められません」
「一つの街よりも多い」
「ウィーンやパリよりも」
「ローマよりもな」
この永遠の都よりもというのだ。
「一度の戦で集めてくる数はな」
「多いですね、確かに」
「しかもだ」
「ただ多いだけでなく」
「そのうえでだ」
さらにと言う子爵だった。
「彼等だ」
「イエニェチェリですね」
ヒメルスもここで彼等の名前を出した、賑わうイスタンプールの中で。
「これからご主人様が調べられる」
「鉄砲を持ちな」
「鉄の如き統制と」
「皇帝への完璧なまでの忠誠だ」
「それを持っている彼等をですね」
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