第三章
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「あの」
「はい」
「食事も終わりましたし」
「それではですね」
「外に出て」
レストランの窓の外に見える公園を見ての言葉だ。
「お話をしましょうか」
「はい、それでは」
メアリーも微笑んでヴィンセントの提案に応えた、そうして。
二人で公園に出てだ、そこでだった。
公園を歩きながら二人で話す、公園は緑が豊かな熱帯のものだ。しかし鬱蒼としたものは全くなく丁寧に揃えられている。
青い池もある、その池も見つつだった。
ヴィンセントは自分の隣にいるメアリーにだ、こう言ったのだった。
「貴女は何のお仕事をされているのでしょうか」
「学生です」
メアリーは微笑んで彼の問いに答えた。
「大学生です、次の春にです」
「就職ですか」
「はい、貿易会社に」
終章が決まっているというのだ。
「そちらに」
「そうなのですか」
「それでリーさんは」
「はい、銀行に」
「父が頭取を務めている」
「あの銀行に就職します」
既にそのことが決まっていることをだ、彼はメアリーに話した。
「そうなります」
「そうですか」
「それでワンさんは」
これがメアリーの姓だ。
「貿易会社ですが」
「リーさんのお父様の」
「そうですね、父の」
「そこに務めることになっています」
「同じですね、それでは」
「そうですね、お互いの」
父の勤め先に入る、まさにそれがというのだ。
「そうですから」
「はい、それでなのですが」
ヴィンセントはメアリーにこうも話した。
「こうして今二人でいますが」
「はい」
「宜しければ」
「これからもですね」
「こうして貴女の都合がある時に」
その時にというのだ。
「お会いできればと思っていますが」
「私もです」
こう答える決まりがあるかの様にだ、メアリーは微笑んでヴィンセントに顔を向けて彼のその言葉に答えた。
「宜しければ」
「時間がある時に」
「お会いしましょう」
「それでは」
こう話してだ、そしてだった。
二人はこの日からお互いに時間がある時に会い話をした。ただ会う時は事前に両親の許しを得てからだった。
そうして食事と公園の二人での散歩をしていって。
何度目かでだ、ヴィンセントはまた家の中で父にこう言われたのだった。
「どうだ、ワンさんとは」
「彼女とはだね」
「何度かお会いしているが」
「いい人だね」
ヴィンセントは予定調和の様に答えた。
「とても」
「そう思うんだな、御前は」
「うん、そう思うよ」
「よし、そう思うのならな」
「それならだね」
「大学を卒業したらだ」
そしてだ、就職したその時にというのだ。
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