第一章
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真面目カップル
シンガポールは何かと厳しい国だ、街を少し歩いても。
あちこちに何をするな、これをしてはいけない、すれば罰金だと書かれている。シンガポールにいる人間はその中で生きている。
そうしたお国柄故か国民性も生真面目だ。それはヴィンセント=リーにしても同じだ。
ヴィセントはイギリス系の名前だが彼は華僑だ、両親共にそうである。シンガポールではこうした風な名前の人間も多い。
大学生であり将来は銀行員になることも決まっている、その彼がだ。
大学でだ、講義と講義の間の休み時間にこう言われた。
「君も結婚するね」
「そうするね」
「うん、それはね」
四角い眼鏡で細長い顔だ、髪の毛は短く清潔に刈られている。目は細く生真面目な目だ。表情もそうした感じだ。
一七五程の身長で痩せた身体をしている、服の着こなしもだ。
その彼がだ、同級生達にこう答えたのだ。
「そのつもりだけれど」
「じゃあ相手がいないとね」
「言うまでもなく」
「やっぱり結婚はね」
「相手がいてこそだよ」
同級生達は彼にそれならと言ってきた。
「まさか一人で既婚という訳にもいかない」
「そんなことはジョークでしかないからね」
「やっぱり結婚するなら相手が必要だよ」
「誰かね」
「相手ね。けれどね」
その話になるとだった、ヴィンセントはというと。
深く考える顔になってだ、同級生達にこう返した。
「今の僕にはね」
「相手がいない」
「そうだっていうんだね」
「そうなんだ。しかもね」
ヴィンセントは自分から話した。
「これといって好きな相手も」
「今はなんだ」
「いないと」
「うん、これといってね」
難しい顔での言葉だった。
「いないんだよ」
「相手がいないとはね」
「それは厄介だね」
「まず好きな相手がいないことにはどうしようもない」
「そこからだね」
「そうだよ、どうしたものかな」
自分でこう言うのだった。
「そもそも相手もいないからね」
「それじゃああれだよ」
彼の言葉を聞いてだ、同級生の一人がこう彼に言った。
「紹介してもらうんだよ」
「いい人を?」
「そう、好きな相手がいないならね」
「その相手を紹介してもらうんだね」
「この国はそういうことにも五月蝿いよ」
結婚についてもだ、とにかくあらゆることが監視されチェックされている国家なのだ。そうした面は確かにある。
「だからね」
「結婚はだね」
「しておかないとね」
駄目だというのだ。
「さもないといいことはないよ」
「そうだね、それじゃあね」
「君も大学生だし」
これは話をしている彼にしてもそうだ、同じである。
「それならね」
「そろそろだね」
「
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