第一部 刻の鼓動
第四章 エマ・シーン
第二節 期待 第五話 (通算第70話)
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みたいに天賦の才がある訳じゃないさ」
「そんな…」
自嘲めいた言葉に自信喪失している人間にとってカミーユがどれほど何を言おうとも、傷口に塩を塗ることにしかならない。
ランバンも名乗りを挙げたものの、自分の実力がカミーユに劣っていることは自覚している。カミーユは特別なのだ。群を抜く成績ではないのに、実機編隊訓練では撃墜されたことがないのは、何かあるとしか考えられなかった。
「《リックディアス》はいい機体ですよ」
ヘンケンを宥めるようにシャアはことさら付け加えた。そしてそれは、カミーユたち連邦軍のパイロットに聞かせなければならない。戦力の乏しい中では仲違いするのも馬鹿らしいことだ。それに自分の乗機として、それほど《ガンダム》を評価していないということもある。ツィマット社製のMSには馴染みがないものの、戦時中に進められた統合整備計画で規格統一されたインターフェースは、さすがにジオンの物であり、シャアには扱いやすかった。
「取り敢えず《ガンダム》にはカミーユに乗って貰おう」
そう、シャアが機動歩兵部隊の長として結論を言おうとしたその時、緊急警報が鳴り響いた。
――緊急警報、緊急警報。最大索敵圏に敵艦捕捉。第二種警戒体制。乗組員は所定の位置に付け。繰り返す。敵艦捕捉……
同時にインターホンが鳴った。慌てヘンケンが受話器を取る。
「どうした!」
発令がトーレスであるのに不自然はない。ヘンケンは、年が若くとも状況を積極的に理解しようとするトーレスが気に入っていた。しかも、《アーガマ》の艦橋要員としては最古参であり、副長にしてもいいぐらいだったが、所属が通信科であり、管制担当であるため副長に任じられずにいた。航宙長であるサエグサの方が任じやすいが、サエグサは初任幹部であり、無理がある。
そのトーレスが第二種警戒体制を敷いたのが不自然なのだ。敵艦を捕捉したのなら現状であれば第一種戦闘配備に移行すべきだ。その判断はトーレスならばできる。
――敵艦から入電『我、戦闘ノ意志ナシ。交渉ヲ望ム』です。どうしますか?
「敵艦は《アレキサンドリア》一隻か?」
横からブレックスが口を挟んだ。
状況は単艦の艦長が負うレベルの話ではなさそうに思えたからだ。シャアもヘンケンの傍らに寄っていた。今は《アーガマ》所属のMS隊を預かる身であるから、当然ではあった。
カミーユたちは一斉にガンルームを飛び出した。戦闘配置でないにせよ、ハンガー横の待機室にいた方が対応しやすいからだ。
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