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機動戦士ガンダム0087/ティターンズロア
第一部 刻の鼓動
第四章 エマ・シーン
第二節 期待 第三話 (通算第68話)
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る。クワトロのが階級は大尉だが、明らかに一介の尉官以上の見識と人脈、そして情報網を有していた。
「そうだ。アストナージが滷獲した《ガンダム》をバラしたいと言っていました」
 実のところシャアの関心はメズーンにはなかった。無視された形のメズーンはシャアの態度に怒りもせず、じっと見つめている。
「アストナージらしい。中尉、いいな」
 くくっと笑いながら訊く。メズーンに否はなかった。自分の目的は達せられたのだから、既に俎上の鯉である。
 ヘンケンだけでなく、ブレックスも、レコアもシャアも、今回の強奪成功はメズーンのおかげであると考えていた。だからといって軍事行動の成果である滷獲した《ガンダム》をどう扱おうがメズーンに断りを入れなければならない理由はない。ただ、同意を促すことで、メズーンを仲間として認め、皆との信頼関係を始められるなら、安いものである。この辺りの気配りが、ヘンケンを皆が慕う理由であろう。上に立つ者としての大度である。
「准将、自分はどうなりましょうか」
「中尉には月に同行してもらいたい。サイド7を脱出してくる仲間を救うにしても、救援と補給をしなければならん。私は軍事においてでさえ全権は委ねられている訳ではないのだ」
 ブレックスの歯がゆさが滲んでいた。階級の問題もある。せめて少将でさえあれば……。それだけにヘンケンやグラナダ防衛大隊のシュトマイヤー中佐らの支持が有り難かった。だが、軍隊とは組織戦である。エゥーゴ独自の組織を作らなければならなかった。
「自分をこの艦に――《アーガマ》に置いていただけませんか?」
 行き場を失ったメズーンは小さな偶然から再会した旧知のランバンやカミーユと離れることを嫌った。いまさらサイド7には戻れない。それならば、エゥーゴの兵士として戦いたい。
「それは構わない。歓迎するよ、メズーン中尉」
 ブレックスはシャアとヘンケンに視線を振った。シャアは静かに頷き、ヘンケンも嬉しそうに笑っていた。エゥーゴにとって既に戦端を開いた以上、人は幾らでも欲しい。ましてやパイロットは貴重である。訓練には時間も費用も掛かるのだ。
「だが、乗ってもらうMSがないな」
「滷獲した《ガンダム》があるだろう」
 シャアの感覚からすれば、ガンダムは二機ともアナハイムに渡すのが当然であった。補給も整備もロクにできない機体を前線で使うには不安が付きまとう。だが、連邦は規格が統一されているため、MSは特殊な部品以外はどの部隊でも代えが利く。前提条件が違うため、意見は正反対になった。
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