第一部 刻の鼓動
第四章 エマ・シーン
第二節 期待 第二話 (通算第67話)
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「失礼します」
ヘンケンに伴われて、二人の士官が入室する。カミーユ・ビダンとランバン・スクワームである。二人はパイロット用のノーマルスーツを着たままだった。ヘルメットをバックパックの上部フックに咬ませて固定している。対宙監視に駆り出されていたのをヘンケンが呼び戻したのだ。
短く刈り上げた茶髪に長身だが横広な体型のため余り高く見えない巨躯のランバンと柔らかだが癖のあるまとまりのない髪を洗い晒しにした鹿毛の一見女と見紛うような線の細いカミーユ。対称的な二人を見て、メズーンは見たことがある気がしたが、ここに居るはずがない知人であり、はっきりと見ていなかったことも手伝って、結びつけられなかった。心の余裕がないとも言えた。
先に気づいたのはランバンだった。
ランバンにとってメズーンは兄同様の存在であり、一年しか付き合いのないカミーユより気づくのが早かったのは当然といえる。
「メ、メズーン先輩!」
「ええっ?!」
カミーユがランバンの言葉に驚いた。
確かにそこには高校時代の先輩がティターンズの制服を着て座っていた。そんな、バカな。胸中に疑念が渦巻く。ティターンズに与するような人ではなかった。それが何故《ガンダム》に乗って、ここに居るんだ?解らない。何か言おうにも言葉が出てこなかった。
三人の様子にヘンケンが笑うと、たちまち大人たちの笑いが続いた。
「何が可笑しいんですか?」
不貞腐れたようにカミーユが突っかかる。止せよとばかりにランバンが袖を引くが後の祭りだ。カミーユの態度にヘンケンが口をへの字に曲げた。
「カミーユ少尉、可笑しかったのではない。安心したのだよ」
周りを制してブレックスが諭した。その言葉にメズーンの顔が明るさを取り戻す。それは信用してもらえたに等しかったからだ。
「フォーラ准将、感謝します。
カミーユがいるなら、彼に伝えたいことがあるのですが…」
おずおずとメズーンがブレックスに許可を求めた。ブレックスは無言で頷く。メズーンはランバンを見、カミーユに向き直ると一瞬言葉を躊躇ってから、だがハッキリと伝えるべきことを伝えた。
「……実はファ・ユイリィに反政府運動への関与の嫌疑が掛かったんだ」
「そんな……」
あの勝ち気だが優しいファと反政府運動が結びつく筈がない。カミーユの顔がそう言っていた。だが、周りの大人は事情が飲み込めない。困惑するブレックスたちにランバンがユイリィとカミーユの関係を説明した。
「カミーユ、落ち着け。ファがそんなことするはずもない」
激昂しそうなカミーユを抑えようという気も手伝って、声のトーンを一つ下げた。
カミーユは居ても立ってもいられない。軍人でなければ助けに行けるのに。いや、軍人だからこそ助けられる力が持てるのではないか――渦巻く感情を言葉にすればそんなところ
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