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機動戦士ガンダム0087/ティターンズロア
第一部 刻の鼓動
第四章 エマ・シーン
第二節 期待 第二話 (通算第67話)
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か。
「メズーン中尉はそれを伝えるために、こんなことを?」
 メズーンはレコアが口を挟んで水を向けてくれたことに目で感謝した。さらに、ファーストネームで呼んでくれたことで、気安さも生まれる。レコアはウインクで応じた。
「いえ、彼女を含めた反地球連邦政府運動の被疑者を全て脱出させるための陽動に、エゥーゴの襲撃を利用させてもらったのです」
 今度はブレックスらが驚く番だった。
 メズーンは反地球連邦政府運動のメンバーと接触し、エゥーゴの襲撃を事前に知っていたのだから。つまりは、自分たちが誰かの掌で踊らされていたということだ。
「それは、エゥーゴの協力者が立案したことか?」
 ヘンケンが不機嫌に会話へ割り込む。彼としては当然の反応だった。アナハイムを通じてコロニー公社のツテを利用したにはしたが、今回は地下運動員を使わないプランだったからだ。
「ティターンズ内部も一枚岩ではない……ということです」
 メズーンの説明は曖昧だが、理解はできる。エゥーゴも一枚岩ではない。サイド2政府などは親連邦派が多く、今回の作戦に消極的であったり、サイド6政府はあからさまに反対している。
 メズーンは歯切れが悪くならざるを得ない事情を抱えている。レドのことは味方にも隠しておかなければ、立場が悪くなる可能性もあるからだ。エゥーゴにもスパイが潜り込んでいることを警戒しなければ、今後レドが動きにくくなる。
「それと、脱出は四日後ですが、追手が掛かる可能性があります。救助をお願いしたいのです」
 さっと立ち上がり、ブレックスに頭を下げた。無言だったランバンがメズーンに倣う。カミーユもランバンの隣に立ち、二人よりも深く頭を下げた。
 若者らしい率直さを嫌う軍人はあまりいない。ヘンケンなどは既に救助に行くのが当然だと思っている。しかし、今は目の前のことに対処しなければならなかった。
「脱出の手筈は誰がとっているのだ?」
「脱出する際に使う艇はブライト・ノア中佐の《テンプテーション》だと聞いています」
 ヘンケンが口笛を吹いた。
 ブレックスの目が輝く。欲しい――ブレックスはエゥーゴが反地球連合として動くための旗印になる人物を探していた。ホワイトベースのクルーはリストに挙げられていたが、監視が厳しく、接触することが出来なかったのだ。旧ホワイトベースの艦長ならば、旗手足り得る。後継者――いや、実質的な指導者としては不足だとしても、正義がいずれにあるかを民衆に問うには最適な人物である。
「決まったな」
「先ずは目の前の追撃を振り切ってからだ」
 沸く一同を訝しげに見つつ、クワトロが入ってきた。
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