雷の神の一撃を
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よと男が言い寄って来そうだ(実際にそうであるが、寄り付いた男はヴィーテルシアに蹴り飛ばされるか毒舌を前に精神的にズタズタになるかのどちらかである)。
『クロ君』
もう1人は、黒髪に淡い桃色の花の髪飾りを付ける少女。
特別美人ではないがどこか透き通ったような魅力を持つ顔立ちに、柔らかく温かな笑み。無理難題を押し付けるのが趣味なんじゃないかと疑う程に無茶を押し付け、それでもカラカラと笑っていた彼女。ワガママめいた事ばかり言って、それでも確実にクロノを前に引っ張り続けていた。その姿は最後に会ったあの日と、全く変わっていない。
「ティア…ナギ……」
震える声で呟くと、2人の少女は同時に頷いた。
今のクロノが正常ならば、ここでこれが幻覚である事に気づいただろう。例えば、2人同時に頷くなんて打ち合わせでもしない限り無理だ、とか、オレの問いかけにティアが素直に答える訳がない、とか、ナギは死んでるんだから会える訳がない、とか理由を付けて。
だが、今のクロノは正常ではなかった。探し求める2人が目の前にいる―――――それで頭がいっぱいで、他の事なんて考えてられなかったのだ。
『さあ、兄さん』
『一緒に行こう?』
静かに差し伸べられた2つの手は、どちらも本物そっくりで。
ますますクロノは疑う事を放棄する。これが偽物であるはずない、と根拠のない理由を無理矢理つけて、納得する。
ミョルニルから左手を離し、伸ばされた手に自分の左手を重ねるべくゆっくりと手を伸ばす。
「レーゼ!」
―――――――その手が重なるよりも早く、3人目の少女の声が耳に飛び込んだ。
ハッとして瞬きをすると、そこに2人はいなかった。
目線を周囲に走らせるが、青い髪も黒い髪もどこにもない。前を向けば確かに黒髪であるジョーカーはいるが、クロノが探す黒髪は彼ではない。
(今のは……?)
暫し考え、気づく。
まさかと思いつつ振り返ると、そこには自分を見つめる妖精の尻尾のメンバーがいた。
更に視線を彷徨わせる。クロノの推測―――――あれが幻覚であった、というのが正しいのならば、きっと彼女がそれを解いたはずだ。
探し、見つける。目が合った藍色の髪の幼い滅竜魔導士は、その目が何を意味するかを解っているかのようにこくりと頷いた。
(なるほど、状態異常回復魔法ってのは幻覚にも作用するのか。ま、列記とした状態異常だし当然か)
左手を引っ込め、ミョルニルを握る。
ニッと口角を上げると、ジョーカーが僅かに後ずさった。
(確かにアレは1番効いた。だが、逆に言うとアレは大きなミス)
それは、妖精の尻尾のメン
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