運命の決着編
第130話 紘汰にとっての咲
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ガレージに戻ったペコと入れ替わりに、紘汰は外に出た。
どこに行こうと思ったわけではない。何となく、近くにあった公園に入った。
公園内はやはりヘルヘイムの植物に侵食され、あちこちから果実の香りが漂ってきた。
紘汰は池を囲む柵に生えた果実を一つ、無造作にむしった。ドライバーを着けてはいないので、果実は果実のまま、紘汰の手に収まった。
「紘汰くん!」
ふり返る。咲だった。嬉しそうな顔をして階段を降りて走って来た。
「あのね、あのねっ。ザックくん、うらぎったんじゃなかったんだって。ペコくんに手紙渡しに来てね。戒斗くんを止められないかやってみるって」
「ザックが……そっか。あいつが考えそうなことだな」
「うんっ。よかった」
喜色一色だった咲が、ふと、紘汰の手の中のヘルヘイムの果実を見咎めた。
「ね、何でそんなの、持ってるの」
問いに対し、紘汰は力なく笑うしかなかった。どうせ自分は、この子にだけは隠し事ができない。
「咲ちゃんなら、薄々分かってたんじゃないか? 俺がもう人間じゃなくなってるって」
紘汰はもいだ果実にむしゃぶりついた。
「! 紘汰くん!」
咲が紘汰の腕に飛びついた。だが、遅い。もう果肉を飲み込んだ後だ。
「やっぱり、うまい――っ」
今にも泣き出しそうな声だと、どこか冷静な自分が思った。
どん、と胸板に衝撃があった。見下ろせば、咲が紘汰に抱きついていた。
見上げる目は、ヘルヘイムの果実を平気で食べる紘汰でも構わない、怖くない、と訴える。
レデュエに幻影を見せられたあの時から、どうしてか、咲の考えがぼんやりと分かるようになった。
紘汰は咲の薄い両肩に腕を回し、咲を抱き返した。
恋しいか、と問われれば、分からない。
大切か、と問われれば、大切だ、と留意なく答えられた。
妹のような娘のような、母のような姉のような。時には友達で、戦友で、守るべき幼子で、自分を何度も絶望の淵から掬い上げてくれた恩人。
大切だ――としか形容のしようがなかった。
紘汰は咲を離し、咲の目をまっすぐ見た。
「咲ちゃん。もし俺より先にこの街を出ることになったら、伝えてくれないかな。晶姉ちゃんに。姉ちゃんの手料理、もう食えなくて、ごめん、って」
長い、長い間があった。
やがて、咲は「わかった」とだけ呟いた。
直後、飛行するものの駆動音が公園に満ちた。
まさか。紘汰と咲は顔を見合わせて、公園を飛び出した。
ドルーパーズに向かう途中の広場に、ヘリコプターがプロペラを回したまま着地していた。
自衛隊らしき男たちが凰蓮たちをヘリコプターまで連れて行っている。
「
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