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運命の向こう側
プロローグ1
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んでだだ? 図書館島で魔術師の活動してもらうつもりなんて、俺はないぞ」
「……たまに、シロウは恐ろしいことをしますね」
「……無自覚なのがなお恐ろしいわ」
「だから、なんでだよ。バゼットにも妙に関心されたけど」

 冷戦状態の組織からの、受け入れざるをえない監視役。顔見せ時に初めて、一般職員として紛れ込んでいたことが発覚するのだ。これで、そうだったのか、で済ませるのは衛宮士郎だけである。普通は、お前らの所になどいくらでも潜り込ませられるぞ、という脅迫以外の何物でもない。
 これは、士郎が特別血の巡りが悪い、という訳では無い。むしろ人一倍気を利かせる(それで他者に迷惑をかけないかどうかは別にして)人間だ。ただ、気を利かせる方向が個人に向きすぎているだけなのである。

「まあ、さすがの私でもちょっと引くくらいえげつない手だけど、悪くないわ。向こうとは士郎が直接連絡を取り合ってるのよね」
「引くって……。ああ、そうだぞ」

 士郎のつぶやきは、しかしあっさりと無視された。うなだれながら、電源のついたパソコン画面、該当するメール部分を開いて見せる。
 執務室のある建物は、魔術協会本部とはわずかに離れた場所にあった。これは、外部の窓口をつとめる役割もあるためだ。当然、インターネット環境も完備されている。意外な話であるが、蓋をあければなんでもない。魔術師は、確かに最新技術と折り合いが悪い。とはいえ、それを無視しては社会的影響力を維持出来ない、とういだけだ。
 凛は画面を覗き、素早く文面に目を通す。ちなみに、間違っても入力機器に触れないようにしていた。

「ふぅん。向こうは英雄の息子くんとできる限り引き離そうとしている、か。まあ、予想通りよね。じゃあ、これの返信は……」
「ああ、ちゃんとした。OKだって言っといた」

 びしり――士郎の言葉に、凛は石のように固まった。そして、ぎぎぎ、とブリキのように音を立て、士郎に向く。
 繰り返すが、士郎は配慮の無い人間ではない。その方向が、組織を度外視しているだけで。――ただし、絶望的に察しが悪いのは、たぶん誰も否定しない。
 やばい、直感的に感じて、士郎は身をひく。しかし、その判断は絶望的に遅すぎた。

「このばかちーん!」
「どあああああっ!」

 うなりを上げる、アッパー気味の左フック。プラスガントも当然忘れない。物理魔術複合のダブルアタックは、士郎の紙のような抵抗力をあっさりと貫通した。
 けたたましい音を上げながら、舞い散る書類と共に転がる。凛はそれをあっさりと無視して、パソコンと正対した。額にびっしりと脂汗を乗せ、震える手でキーボードを触ろうとして。

「この世の中に何で交渉ってものがあると思ってるのよー! う、ううぅ、うあああぁぁぁー!」
「やめてください! 私が
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