暁 〜小説投稿サイト〜
運命の向こう側
プロローグ1
[4/8]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
様。お茶を用意してあるよ」
「はい、少し休憩しましょう」

 隣の部屋から顔を出したセイバー。カウンターテーブルにのったお茶菓子に手を伸ばした。
 凛も一息つくようにお菓子を食べるが、スペースが無いためデスクに座ったままだ。間取りがいいとは言いがたい執務室では、三人で卓を囲む余裕は無い。

「セイバーは知ってたの? 士郎が派遣されるって話」
「ええ、聞いてはいましたが……」

 軽く、表情が曇る。そう決断した理由までは聞いていないと、雄弁に語っていた。

「と、言うわけで。ちゃっちゃと吐きなさいよ」
「別に隠してたつもりはないんだけどなぁ」

 スティック状のクッキーを突きつけながら宣言され、うめく士郎。
 少しだけ椅子を引いて、引き出しをあける余裕を作る。書類やら筆記用具やら、重要性の低そうなものが、乱雑に転がっている。その一番上に乗っている封筒を取り出して、差し出す。
 手渡された封筒を、裏表確認する凛。セイバーも首を伸ばして、横から見ている。

「なにこれ、藤村先生から? イリヤじゃなくて?」
「藤ねえが気を利かせてくれたんだろ。その中身が重要なんだ」

 言われ、封筒から取り出されたのは、一回り小さい封筒だった。しかし、外側の封筒が真新しいのに比べ、こちらは年季が入った汚れ方をしている。
 わずかに汚れた封筒には、達筆な字で書かれていた。一つは、衛宮切嗣。そしてもう一つは、遺言状、と。凛とセイバーは、字を確認し、揃って目を見開いた。

「いやあの、あんた、これ……。こういうのって、私が見ちゃっていいの?」
「別にかまわないぞ。俺はもう中身を確認してるし、遺言状自体、珍しくないし」
「遺言状が珍しくないとは、どういう事です?」

 首を傾げたのはセイバーだ。表情が怪訝そうなのは、以前に合っていた切嗣の印象に合わないからだろうか。

「いや、切嗣は遺言状を隠すのをおもしろがっていたみたいでさ。死んだ直後なんか、家中から数十通の遺言が見つかったぞ」
「……あんたのお父さんも、本当によく分からない人ね」

 ため息をつかれても、苦笑で返すしか無かった。
 ちなみに、遺言状の内容も千差万別だ。お供え物はだんごにしてくれ、というくだらないものから、権利書の類いまで。そして、今回は――後者よりのものだった。

「これは、手紙と写真?」
「中央左が切嗣ですね」

 写真には、四人の人間が映っている。一人は、無精髭を生やし、曖昧な笑みを浮かべた衛宮切嗣。そのすぐ隣に、ヨーロッパ系の青年が、元気良さそうに絡んでいる。さらに隣に、白木拵えの刀を持った、血色の悪い男。最後に、写真の隅でとても嫌そうな顔をしている、金色の髪が美しいお人形のような少女だった。

「これ、誰なの?」
「俺も知らない
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2025 肥前のポチ