第九章
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第九章
「もう少ししたらバレンタインだけれどね」
「あっ、そうだったね」
「楽しみにしてて」
雅は猛をじっと見て告げた。
「腕によりをかけて作るから」
「うん、わかったよ」
「バレンタインもあれよ」
そしてだ。雅はここでこう言うのだった。
「一本取ってないとね」
「なかったんだね」
「そう。けれど一本取ったから」
それでだというのだった。雅にとっても嬉しい一本だったのである。
二月十四日。猛は満面の笑顔でいた。そのうえでだった。
彼は自分の席であるものを実に美味しそうに食べている。その彼を見てだ。クラスメイトはわざわざ彼の席のところに自分の椅子を持って来て座ってだ。こう言うのであった。
「滅茶苦茶幸せそうだな」
「うん、これ雅が作ったチョコレートなんだ」
「彼女の手作りかよ」
「彼女じゃないよ」
猛はそれをすぐに否定した。そしてこう返すのだった。
「許婚だよ」
「そうなったのかよ」
「うん、目出度くね」
「じゃあ余計にいいのかよ」
「これも花嫁修業って言ってね」
にこにことしながら言うのだった。言いながらその箱の中のチョコレートを食べていく。一粒一粒に様々なラッピングがされている。
「それでなんだ」
「美味いか」
「こんな美味しいチョコレート食べたことないよ」
これが猛の今の返答だった。
「いや、本当にね」
「そうか。よかったな」
「うん、僕今最高に幸せだから」
「ったくよ、何でこんなに幸せな奴がいるんだよ」
クラスメイトは苦笑いを浮かべてぼやいた。
「世間様ってのは不公平だよな」
「けれどさ。こうなるまではさ」
「ぼこぼこにやられてたんだな」
「だから雅だよ」
彼女だからだというのであった。
「雅から一本取るのって」
「全国大会優勝からはかよ」
「凄く難しかったからさ」
「それがあってこそってんだな」
「そういうこと。それで許婚になったし」
その一本取った結果であるのは言うまでもない。
「いやあ、本当によかったよ」
「それでな」
クラスメイトは暑いと思いながらも猛にさらに問うた。
「そのチョコレート美味いんだよな」
「こんな美味しいチョコレート他にないよ。さっきも言ったけれど」
「そうか、そんなにか」
「雅って料理も凄いんだよ」
話がのろけに向かう。どうしてもだった。
「もうそれがね」
「それはよかったな」
そんな話をしているとでだった。ここでだ。
クラスに雅が入ってきた。そのうえで猛のところに来て言うのであった。
「どう?チョコレート美味しい?」
「うん、とてもね」
本人にもにこにこと答える彼だった。
「有り難う、最高のチョコレートだよ」
「そう、それならいいわ」
「じゃあお返しは」
「そん
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