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Shangri-La...
第一部 学園都市篇
第3章 禁書目録
七月二十五日:『死体蘇生者』
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ところだしな……。

 一応、“妖蛆の秘密(デ・ウェルミス・ミステリィス)”に関連する記憶は嚆矢の『空白(ウィアド)』のルーンで消している。だが、『幻想御手(レベルアッパー)』の事はノータッチだ。
 だから、自分が『幻想御手(レベルアッパー)』を使った事は覚えている筈。

「元気そうだな、弐天巌流学園(うち)の合気道部の次期主将……二つ名は『圧潰領域(シュヴァルツシルト)』でいいか?」

 花を近くの台に置き、軽口を。いつも通りの、軽口ジャブである。

「茶化さないでください。そもそも、もう僕にはあれだけの力は振るえません」
「何だよ、折角二秒も懸けて考えたのに。素直に受けとれ、二つ名を送るのはうちの代替わりの伝統なんだからよ。俺だって、前の主将から『制空権域(アトモスフィア)』何て二つ名を頂戴した時は恥ずかしかったのなんの……」

 近くの椅子に腰を下ろし、ニッ、と口角を吊り上げて笑い掛ける。軽く気分を害したらしい古都は、ジト目でそれに答えて。
 一瞬、不思議そうに瞼を揺らす。嚆矢の背後を、足元を見た後で。

「本当に申し訳有りませんでした……今回の件で、折角、先輩方が築き上げた部の看板に泥を塗ってしまいました」

 そして俯きながら、言葉を吐く。謝罪と、自嘲を。

「全くだな。『幻想御手(レベルアッパー)』なんて莫迦なモンに手ェ出しやがって。これが薬物とかなら、テメェ、マジでヤベェところだったンだからな」
「はい……主将の期待に応えるどころか、後ろ足で砂を掛けるような真似をした僕には────主将になる権利なんて、有りません。有っちゃ……いけないんです。だから、これを」

 差し出されたのは、一通の封筒。表には、達筆な『退部届』の文字。
 恐らくは、今日の朝に目覚めて直ぐに用意したのだろう。責任感の強い彼らしい、性急が過ぎる自裁だった。

「おう、気が利くな」

 受け取り、それで────チーンと。真夏日の外から冷房の効いた室内に入った為に、少し詰まった鼻を噛んだ。
 そして、最後はくしゃりと丸めてゴミ箱に。それで終わり。古都に向き直り────

「……そう来ると思って、数は揃えておきました」
「真面目な奴が本気出すと、これだからなァ……」

 引き出しの中には、几帳面にぎっしりと。いやはや、大雑把で飽きっぽい嚆矢にはちょっとしたホラーである。
 それを、呆れ果てた眼で見詰めて。

「古都。あのな、迷惑なら最初(はな)っから此処には来ないで除籍処分(三行半)だ」

 実際、彼はそうする。以前、自分の力を誇示する為に合気道部の門を叩いた学生が居た。確か、同学年の大能力者(レベル4)の『念動能力(テレキネシス)』だった筈。鋼鉄すら捩じ切る程の、『握力』が自慢の特
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