第一部 学園都市篇
第3章 禁書目録
七月二十五日:『死体蘇生者』
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が、これだけは。
『てけり・り。てけり・り』
「……るせェぞ、昨日話した通りだ。折角のいい気分に水差すな、化物」
そんな折、足下のショゴスが『煙草をくれ』とばかりに啼いた。すかさず、血涙を流す瞳が覗く影に向けて悪態を吐く。
片や銀髪美少女シスターとピンク髪合法ロリ教師の甲斐甲斐しい看病を受ける厚遇、片やSAN値直葬モノの怪物にタカられる有り様。
『解せぬ』と。余りの差に、危うく感動以外で涙が出そうになった。
「ハァ……まぁ、戦利品は有ったし、良しとするか」
『てけり・り。てけり・り』
「だから、うるせェっつってンだろ」
溜め息を吐いて、気を取り直して。煙草を銜え、火を点す。懐、そこから取り出したトランプ……全て回収した訳ではないが、ステイルが仕掛けた『人払い』の結界に使われていた、ルーンのカード数枚をカードマジックのように弄びながら。
都市摩天楼の朝、そこに背を向けて。這いずるように蠢く、血涙を流す紅い瞳を無数に浮かばせては沈ませる悍ましい影を引き連れて、郊外の自宅へ帰るべく近場のバス停を探す事にした。
………………
…………
……
昼下がり、蝉の大合唱の最中。自室に帰り、風呂に入って着替えた意味もないくらいに汗を掻きながら、嚆矢は目的地に到着した。
現在時刻、十三時四十五分。約束の時間までは、まだ十五分ある。
「花はこれで良し、と……」
二つの花束を手に立ち入るそこは、病院。『幻想御手』事件の被害者……かのプログラムを使用した学生達が入院している病院である。
その、見舞いに来たのだ。佐天 涙子と、後輩である蘇峰 古都の。
『てけり・り。てけり・り!!』
「莫迦野郎、これは食いモンじゃねェ。何でもかんでも喰おうとすんなっつーか、昼日中から出てくんな」
『てけり・り。てけり・り……』
花束に触腕を伸ばし、血涙を流す瞳と乱杭歯の並ぶ口から腐った涎を垂れ流すショゴスだったが、叱られてしょんぼりと平面に潰れる。
周りに気づかれていないかとヒヤヒヤしたが、どうやら大丈夫だったらしい。
「あ、こんにちは、嚆矢先輩」
「どーも、対馬さん」
「随分とお早いですのね、意外ですの」
「ああ、こんにちは、飾利ちゃんに御坂。それと俺は紳士だぜ、女の子は待たせないさ、黒子ちゃん」
「「「へー」」」
「あれ? アウェー感半端ないな、こんな色男を捕まえて」
そこに飾利と美琴、黒子が合流する。一気に姦しくなる。ちょっと、窓口の看護師に睨まれたのは内緒だ。
「んじゃ、ちょっと早いけど行こうか?」
先導するように歩く男。少女達が持ってきた見舞いの品を
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