ターン14 鉄砲水と負の遺産
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「うー、眠れな………い………?」
ベッドに倒れこんでからしばらくして。体はだいぶ疲れてるのに、どうも眠ることができない。なんとはなしに目を開けてみて、次の瞬間跳ね起きた。
目の前にあったのは見慣れた天井ではなく、どこかもわからない真っ黒な空間。目に見える範囲全てがひとかけらの明かりもなく、どこまで行ってもひたすら何もない。その中にただ一つ、僕が寝ているベッドがぽつんと置かれている。
「よう。お目覚めかい、旦那」
「!?」
上半身だけ起き上って辺りを見回していると、目の前にぱっと人の姿が現れた。間違いなくさっきまで誰もいなかったのに、まるでワープでもしてきたかのように。その人物が男なことは体格や声の調子から分かったけど、なぜかその顔が見えない。首から上の部分だけ影がかかったようになっていて、その輪郭しか見ることができないのだ。ただ、かすかに見えるその口がニヤニヤと笑っている。
「まあ起きなよ、旦那。俺が喋ってるのにいつまでも寝てるなんて、随分と礼儀がなっちゃいないじゃないか」
そう言い、ぱちんと指を鳴らす。すると、突然体を支える物がなくなった感覚がした。もっとはっきり言うと、今の今まで寝ていたベッドがふっと掻き消えた。すると当然、支えを失った僕の体は地面に変な体制のまま激突する。
「いてっ」
「おう、そりゃすまなかったね旦那。さてと、少し積もる話でもしようじゃないか」
「話?」
いきなりわけのわからないところに連れてこられて、わけのわからない奴がわけのわからないことを言いだした。いろいろとわけがわからないので、それとなく探りを入れてみる。
「えっと………どちら様?」
「おう、こりゃ失礼。でもまあさっきの旦那もなかなか失礼だったし、ここはひとつあいこってことでお互いに水に流しておくれよ。それで俺のことだけど、残念ながら名乗ることはできないんだ。なにももったいぶってるわけじゃない、遠い昔、かれこれ5000年近く前に名前なんてもんは捨てちまったのさ」
5000年前?名前は捨てた?何を言っているのかちょっとよくわからないけどとりあえずわかることがある。この男は危険だ。穏やかな口調と身振りではあるけれど、一皮むけばその外面の中にはどんな本性があるか分かったものではない。もっともこれは特に明確な理由があるわけじゃない、ただの勘だ。もう少し、もう少しだけ様子を見てみよう。
「いやまったく、旦那には感謝してるんだよ?ああ、訳が分からないって顔だね。じゃあもう少し具体的に話そうか。ここまでに何があったかはだいたい把握したけど、少し前にあのいつまで経っても役立たずな地縛神が受け切れなかった光の波動がほんの少し、ほんの少しだけ旦那の中に入り込んだろう?あの衝撃が俺を、永い永い眠りから解き放ってくれたの
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