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ボロディンJr奮戦記〜ある銀河の戦いの記録〜
第8話 休暇
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と似た琥珀を薄めた、真っ直ぐな金髪を肩口で綺麗に揃えている俺の自慢の義妹。久しぶりに自分の目で見る九歳の妹は、背もグンと大きくなり、スマートな身体を薄手のピンクのキャミソールとホットパンツで包んだその容姿は、年齢以上に大人びて見える。

「遅かったね。寄り道しちゃダメじゃない」
「アントニナ、お前、いつもそんな格好をしてるのか?」
「兄ちゃん何処、見て言ってるのかな? 大声で叫んでもいいんだよ?」
「それは今日、第二空港のホームで経験済みだ。二度はゴメンだな」

 溜息混じりに俺は候補生制服のポッケから、PXで買ったチューインガムを放ってやると、アントニナは器用にも人差し指と中指で挟んで取った。
「他になんかないの?」
「貧乏軍隊の、さらに未成年ばかりの士官学校のPXに、お前は何を期待してるんだ?」
「『アルンハイム』とか」
「未成年者は飲酒厳禁だ」
 散水栓の上に器用に立ったアントニナに向けて、ついでとばかりに俺は候補生用のジャケットを放り投げた。それをアントニナは“空中で一回転して”から掴んで地面に着地する。五歳の頃から器械体操をしていたはずだが、ここまで成長しているとは聞いていなかった。

「ねぇ!! 見た!? 驚いた!?」
「そりゃ驚いたがお前、曲芸師にでもなるのか?」
「ううん。フライングボールの選手になる。先月ようやくリトルリーグに入ったんだ」
「……ま、何してもいいけどな」
 一瞬だけ亜麻色の髪の完璧超人面が俺の頭の中を横切ったが、それを振り払うように一見すると少年にも見えなくもない義妹の頭の上に左手を置いて掻きむしってやる。
「怪我だけはすんなよ。フライングボールは結構危険なスポーツだからな」
「上級生より上手な僕が、そんなヘマするわけないじゃん」
「そう言う油断が禁物なんだ」

 俺がそう言うと、アントニナは俺の左手からすり抜けて、母屋の玄関を空けてくれた。まったく良くできた義妹だと思う。玄関で靴裏を自動消毒してから入ると、リビングではエプロンをしたレーナ叔母さんが夕食の準備をしていた。その横で次女のイロナは書き取りの練習をしており、真似するように三女のラリサが緑のクレヨンで絵を描いていた。横に長い長方形で、後ろが太く、紅いラインがあって所々に節があるから、たぶん軍艦だろう。しかも旗艦クラスの。

「おかえり、ヴィク。遅かったじゃない」
 相変わらず引き締まった体つきのレーナ叔母さんは笑顔で迎えてくれる。
「ヴィク兄ちゃん。お帰りなさい」
 書き取りを続けている六歳のイロナは、視線だけ俺に向けて見るからに面倒くさそうに応える。
「ヴィクにいちゃん、しぇんかん」
 まだ描き途中なのに俺に向かって絵を掲げる三歳のラリサ。近寄ってその絵を手に取ると、艦首の番号が白で〇五〇一と描かれている
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