第六章
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第六章
「気にするな」
「気にしなくていいんだね」
「それでだが」
父は話題を変えてだ。そうしての言葉だった。
「今度こそ雅にな」
「勝てっていうんだね」
「子供の頃から一度も勝っていなかったな」
「一本も取ってないけれどね」
それは子供の頃からだった。本当に雅には全く勝っていないのだった。
だがそれでもだ。彼はここで言うのであった。
「けれど。今日はね」
「取るんだな」
「とりあえずやってみるよ」
こうしてだった。猛はまずは剣道着に着替え準備体操と素振りでウォーミングアップをした。そうしてそのうえでだ。少し遅れて道場に来た雅と対するのだった。
「今日こそは」
「勝つっていうのね」
「やってみるよ」
こう雅に話すのだった。
「一本取るから」
「わかったわ。それじゃあ道場でもね」
「勝負。しよう」
二人で言ってだ。そうしてだった。
二人はまた勝負をする。だがここでもだった。
猛は雅に手も足も出ない。とにかく徹底的に打ちまくられる。道場の門下生達はそれを見て呆れながら言うのであった。
「今日もな」
「全く駄目だな」
「猛さんも強いんだがな」
「雅さん強過ぎるからな」
「もうすぐ免許皆伝なんだろ?」
「向こうの方が先にそうなりそうだな」
雅の方がである。そしてそれはだ。
道場の主である猛の父もだ。言うのであった。
「素質は雅の方が上だ」
「やっぱりそうですよね」
「雅さんはちょっと」
「圧倒的ですよ」
「速さも力も技も」
つまりどれもである。
「全国大会優勝ですし」
「それだけのものがありますね」
「やはり」
「しかし。猛も全国大会までいっている」
父として以上にだ。公平に見て話すのだった。
「いいところまでな。実力はあるからな」
「決して弱くはないですね」
「それはその通りです」
「だからやれる筈だ」
これもまた公平に見ての言葉だった。
「必ずな。特に」
「特に」
「特にといいますと」
「真剣を使うと猛の方が上だ」
その場合はだというのである。彼の方がだとだ。
「それを思い出せば。そこからだ」
「猛さんもですね」
「やれますね」
「できる。必ずな」
こうだ。二人の勝負を見ながら弟子達に話すのだった。
雅は相変わらず攻め続けている。だがその中でだ。猛はクラスメイトとの話を思い出していた。そうしてなのだった。
「真剣だよな」
このことを思い出すのだった。直心影流は真剣をよく使う。実際に竹等を斬ってみてそこから真の剣の使い方を学ぶのである。
彼もまたそれをしてきた。それを思い出してであった。
「ここは」
自分を打ち続ける雅を見る。確かに強い。
だが今は何とか一本を取られずに済んでいる。実は彼は雅
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