第百七十八話 宴会その五
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「しかしな」
「人はですか」
「手に入らぬと」
「そうじゃ、だからな」
それでだというのだ。
「わしは誰にも負けぬ果報者じゃ」
「有り難きお言葉、では」
「我等これからもです」
「殿と一緒に参ります」
「地獄までも」
「頼むぞ、ではいよいよな」
その巨大な天主が間近に見えてきた、そうしてだった。
その城に入るとだ、早速信長が自ら迎えてきた。信長は家康に対して笑顔で言ってきた。
「竹千代、暫くぶりじゃな」
「はい、朝倉家攻め以来ですな」
「そうじゃな、しかし無事で何よりじゃ」
ここでこうも言った信長だった。
「三方ヶ原ではな」
「あれは軽率でした」
家康は信長のその言葉に顔を落とした。
「反省しております」
「うむ、わしからも頼む」
信長も真剣な顔になり家康に言う。
「命は大事にせよ」
「軽はずみな動きはせずに」
「そうじゃ。とはいってもな」
ここでだ、信長は家康にこうしたことを告げた。
「あそこで御主は戦わねばな」
「なりませんでしたか」
「あそこで城に篭ったままだと天下で侮られていた」
「そうなっていたと」
「うむ。だからな」
「あそこでうって出てですか」
「よかったのじゃ。確かに軽はずみであったが」
それでもたというのだ。
「御主もその者達もな」
家康の後ろにいる彼と同じ着色の衣と冠の者達にも言うのだった。
「よくやったわ」
「有り難きお言葉」
「うむ、それではな」
「これよりですな」
「宴じゃ、楽しんでもらう」
信長は笑みに戻ってだ、家康に言った。
「御主達にもな」
「ではそれを」
「山海の珍味に酒じゃ」
そういったものを全てと言う信長だった。
「全て楽しめ」
「さすれば」
「茶も用意してある」
「それもですか」
「うむ、宴の時まで茶を楽しもうぞ」
それをというのだった。
「共にな」
「さすれば」
「うむ、ではな」
こう話してだった、まずはだった。
徳川家の家臣達にも茶が出されてだった、そうして。
家康は信長に天主の中にある茶室に招かれた、そこには利休がいて二人に対して頭を垂れて挨拶をしてきた。
その利休を見てだ、家康は信長に顔を向けて言った。
「利休殿も来られていましたか」
「そうじゃが」
「これ程の方まで来られるとは」
「ははは、城が出来て御主も来たからのう」
「だからですか」
「利休にも来てもらった」
こう言うのだった。
「そのうえでじゃ」
「この度の宴をですか」
「まずは茶じゃ」
利休の淹れたその茶をだというのだ。
「楽しむのじゃ」
「はい、それでは」
「うむ、共にな」
飲もうと話してだ、そうしてだった。
二人はまずは茶を飲んだ、その茶を飲みだった。
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