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戦国異伝
第百七十八話 宴会その一

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               第百七十八話  宴会
 家康は安土に来てだ、織田家の家臣達と同じ様にだった。
 その安土城を見上げてだ、目を大きく見開いて驚きの声をあげた。
「何と、これは」
「あれが天主とのことですが」
「天主閣というそうですが」
 家臣達も驚きながら家康に話す。
「しかしですな」
「あの巨大さ、壮麗さ」
「これまで見たことがありませぬな」
「見事です」
「流石吉法師殿じゃ」
 家康は唸る様にしてこうも言った。
「あれだけのものを築かれるとはな」
「青瓦に金箔に朱」
「この世のものではない様ですな」
 その五層七階の天主閣を見ての言葉だ。
「全く以て」
「あれだけのものを築かれるとは」
「右大臣殿は違いますな」
「他の方とは」
「平安楽土じゃな」
 家康はこうも言った。
「まさに」
「平安楽土、ですか」
「それですか
「そうじゃ、即ち安土じゃ」
 平安楽土という言葉がそのままそうなるというのだ。
「この地こそがな」
「平安楽土の地ですか」
「この地は」
「そうじゃ、そうなる」
 まさにというのだ。
「吉法師殿はそれを天下に示されておられるのじゃ」
「では、ですな」
「その織田殿とですか」
「我等は杯を伴にする」
「そうされるのですな」
「そうじゃ」
 その通りだというのだ。
「そうなる」
「三河と遠江にいて」
「そうしますか」
「出来ればのう」
 ここでだ、こうも言った家康だった。
「駿河も手に入れたいのう」
「あの国もですか」
「駿河もですか」
「うむ、そして駿府に入りな」
 そしてだというのだ。
「あの城にあの天主程ではないが」
「駿府城にですか」
「我等の天主を築かれますか」
「そうしたいものじゃ」
 家康はこう言うのだった。
「徳川なりにな」
「では武田家をですか」
「あの家を」
「散々にやられたがな」 
 三方ヶ原でだ、家康にとっては忘れられない負けだ。
 しかしだ、それでもだというのだ。
「やられたままではいかん」
「武士の面目がですな」
「立ちませぬな」
「だからじゃ」
 それもあって、というのだ。
「駿河はな」
「手に入れられますか」
「それを目指されますか」
「何とか兵は立て直した」
 あの三方ヶ原の敗北からだ。
「銭も多く使ったがな」
「はい、しかし」
「兵は数を揃えられましたな」
「何とか」
「後はあの者達を鍛えじゃ」
 そして、というのだ。
「時が来ればな」
「その時はですな」
「武田家とまた戦になれば」
「その時は」
「次は敗れぬ」
 家康は強い声で言った。
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