第二十二話 菊の日常その九
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「全然な」
「そうなのね」
「あたしの周りってそういう女の子らしいとかいうのなかったんだよ」
孤児院や薊がこれまで通っていた学校ではだ。
「男連中ともよく遊んでたしな」
「野球とかサッカーとか?」
「そうそう、横浜スタジアムとか行ってさ」
横浜ベイスターズの本拠地だ。すぐ傍に中華街もある。
「そうしてたから」
「女の子らしくは」
「なかったよ」
それが薊だった。
「欠片たりとも」
「ううん、そういう娘もいるのね」
「環境よ」
菖蒲が菊に言う。女の子座りで普通の大きさのお握りを食べながら。
「それ次第よ」
「女の子らしくなることは」
「薊ちゃんもね」
「そうした環境だったから」
「薊ちゃんになったのよ」
「あたしはこれでいいよ」
女の子らしくてもいいとだ、薊は笑って言った。
「別にさ」
「そうよね」
「ああ、誰かに迷惑をかけてるなら変えるけれどさ」
「それはないわ」
「じゃあこのままでいいよ」
これまでの薊自身のままで、というのだ。
「別にさ」
「そういうことね」
「まあとにかく環境だよな」
「そうよ。人はそれで決まるわ」
菖蒲は薊に応え己の考えを述べた。
「かなりの部分がね」
「環境なのね」
「生まれよりも育ちよ」
それが大きいとだ、菊にも言う。
「それでね」
「決まるのね」
「全てではないけれど」
「だから私も最近」
「女の子らしくなってきたのだと思うわ」
こう菊に話す菖蒲だった。
「菊さんも」
「そうなるのね、環境ね」
「私もそうだから」
菖蒲もだというのだ。
「今の家庭にいるから」
「菖蒲ちゃんになったのね」
「表情は変わらないのは私の元々の個性だけれど」
「菖蒲ちゃんの性格もよね」
「環境でそうなったのよ」
彼女自身もというのである。
「誰もがね」
「そういえば私もね」
向日葵も言って来た、自分の弁当のおかじであるローストチキンでお握りを食べながら。他には梅干や野菜のおひたしもある。
「よくお寺のことに詳しいって言われるわ」
「それは向日葵ちゃんがお寺の娘さんだからでしょ」
「そう、そのせいでね」
「お寺で生まれ育ったらね」
それこそ、というのだ。
「やっぱりお寺のことに詳しくなるわよ」
「冠婚葬祭についてもね」
こちらのこともというのだ。
「特にお葬式のことにね」
「お盆のこともよね」
「そう、その時期のこともね」
そうした仏教関係については、というのだ。
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