56章 芸術の目的は人間を幸せにすることにある
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そういって、信也はわらった。
「でも、しんちゃんの言う通りかもね。権力を握ると、人って、ろくなこと考えないじゃない。
それって、人間性っていうのかな。初心は、世直しとか正義の使者みたいなことを
考えていても、権力を握った途端、オオカミのように、変貌するのが常じゃないかな。
マイケル・ジャクソンのスリラーじゃないけどね。なんと言ったらいいのか、
堕落する自由もあるのが、人間の自由なのかも知れないよね。あっはっは」
森川純がそういって、わらうと、みんなで大爆笑となった。
「さすが、純ちゃん、こんな楽しくない話で、わらわせてくれて、ありがとう。
マイケル・ジャクソンのスリラーかぁ、やっぱり、マイケルは、いいよね、
最高のレベルのアーティストだったよね」
信也は、テーブルの向かいの、純と目が合う。
「しんちゃん、ぼくも、人を幸せにする方法というのでしょうか、
世の中を良くしていく方法としては、芸術的なことを実践することが
最も有効な気がしますよ。いわゆる、哲学や宗教では、ダメな気がします。
哲学や宗教では、平和になるどころか、かえって、争いの元になるような気がします」
そういったのは、岡昇だった。
「そうだよね、岡ちゃん!たぶん、芸術的なことが、人類の幸福な未来のための、
最後の砦って、そんな気がしているんだけどね。おれは」
信也が、隣の南野美菜に微笑んで、それから美菜の隣にいる岡を見る。
「わたしは、マルクス主義の思想なんて、まるっきし、知らないけれど、どんなに、
人々の平等や労働者の自由を目標に掲げて、説いてみても、そういった論理というか、
言葉だけでは、社会も世の中も良くならないと思います!
ねっ、みんなも、きっと同じことを感じているわよね!」
信也と目の合った南野美菜は、そういった。
「そうそう、美菜ちゃんと、みんなも、同じこと、感じているわ!」
大沢詩織がそういうと、「そうそう」といったりしながら、声を出してわらった。
「どんなに美しい言葉を並べても、哀しいけれど、行動や実践が伴わないのが、
人間なんだわ、きっと」
菊山香織が、そう呟くようにいった。
「そうなのよね、権力を握った人間は、汚職とか、自分がかわいくて、
自分の利益や優位を第一に考えたくてしょうがないんだもの。
社会体制を変えることよりも、人間性というか、個人の意識とか、価値観を
変えていかなければ、ダメじゃないのかしら?」
水島麻衣がそういって、隣の矢野拓海を見る。
「麻衣ちゃんの言うとおりだろうね。おれたちが、微力でもいいから、
コツコツと、音楽とかの芸術的なこととかで、人に感動を与えたり、
人とともに楽しんだりしながら、少し
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