ムキムキと姉
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ど、あたしは母さんがつけてくれたこの名前が大好き。いつか、誰にも笑われることのない、その名にふさわしい人間になる。
見てなさいよ、馬鹿にしてる奴らども!
「愛言葉ァ!」
あたしが低く唸るように叫ぶと、再び男たちがざわめき出す。
「まさか!?」
「いや、ハッタリだ!こんな若い女に、出来る訳がない!」
あたしはそんな男どもを余所に、ぐぐぐと全身に力を入れた。気分はみちみちと筋肉が膨張して、びりっと上半身の服が弾け飛ぶ‐…いやあくまで気分は、よ。気分は。
「筋肉ゥー…」
あたしが叫ぶと、アーサーと名を持つ目の前の男の顔つきが本気になった。
何とっ!彼がフゥン!と唸るや否や、妄想のあたしと違って、本当に上半身の服がばりっと弾け飛んだのだ!
「出た!アーサーの十八番!『筋肉大なること山の如し』!」
興奮しきった野次が飛ぶ。ちょい。ネーミングセンス。
強制的に半裸を見せられるなんてセクハラも良いところで、あたしは白目を剥きかけたが、ここで我にかえってはいけないのだ。脳ミソまで筋肉になったつもりでやりきらなければいけない。それもこれも全部かわいいかわいいノエルの為よ、しっかりするのよ、あたし!あたしは脳内でアーサーのマッチョにノエルが上品にうふふおほほと笑う画を無理矢理上書き保存すると、どうにか吐き気をやり過ごした。いや、兄弟達の裸なら散々見てるけどさ…。
「ムキ!」
アーサーが太い声で叫んだ。握りしめた拳をプルルルと微振動させながら肩の上まで持ち上げ、これでもかと鍛え抜かれた上腕二頭筋を見せつけてくる。
「ムキ!」
しかしあたしも負けてはいない。拳を内巻きに折り曲げると、腹部のあたりで力を籠める。無論、腰は捻りぎみだ。この斜めの角度が大事なのだ。
ここで間違えてはいけないのは、大切なのは筋肉の量や質ではない、ということだ。もしそう言う勝負、あ、これ勝負なんだけど。そういう勝負…だったとしたのなら、女のあたしが、この筋肉ダルマ達と同じ舞台に立てる訳がない。この場合、重視されるのは、ポーズの角度、形の美しさ、そして溢れんばかりの熱い魂なのだ!
あたし達は暫く睨み合ったままぴくりとも動かなかった。睫毛の先を焼かれるような、緊張した空気が流れる。視線の下で、アーサーの胸筋がぴくぴく動くのが見える。あらやだ、きんもいわ。
「認めよう!」
どれくらいそうしていただろうか。アーサーが、いきなり叫んだ。
それを皮切りに、ううわっと部屋が揺れるほどの歓声
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