第一章
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第一章
燃えよバレンタイン
凄神猛の家は剣道の道場だ。それもかなり歴史が古い。
「直心影流っていうと」
「そうだ。あの薪割り剣法だ」
厳しい髭の大男に言われたのは子供の頃だった。彼の父に言われたのだ。
「鬼の如く重い木刀を何千本も振る剣術よ」
「そんなの僕できないよ」
すぐにこう言った幼い時の猛だった。
「力ないから」
「誰でも最初はない」
これが父の言葉だった。その木の道場の中でだ。父子は剣道着で向かい合っていた。正座をしてそのうえで、である。
「しかしだ。鍛錬によってだ」
「なるっていうの?」
「そうだ、なる」
父はこう我が子に告げた。
「わかったな。それでは今日よりだ」
こうしてだった。彼は強引に道場の跡を継ぐ為に修業をはじめさせられた。しかしそれは一人ではなかった。
「えっ、雅も?」
「そうよ」
彼より少し背の高い女の子が隣にいた。黒髪で凛とした顔の女の子であった。その娘も剣道着である。名前を古賀雅という。
「私だってこの道場に通ってるからね」
「それでって」
「何よ、文句ある?」
雅はその顔をずい、と前に出して猛に言ってきた。
「それで」
「そ、それは」
「それじゃあいいわね」
「うん、じゃあ」
こうしてであった。二人は共に修業をすることになった。それから十年経った。猛は高校三年になった。その時の彼はというと。
「なあ凄神」
「何だよ」
急にだ。クラスメイトの一人に声をかけられたのであった。場所は教室、それも彼が自分の席に座っているとであった。その時に声をかけられたのである。
「御前最近どうだよ」
「最近って」
「大学決まったんだよな」
クラスメイトはこのことから話すのだった。
「エスカレーターでだろ」
「うん、八条大学に」
そこにだというのであった。彼はその大学の系列の高校に通っているのだ。三年生なので受験も関わっていたのだ。それはもうクリアーされていたのだ。
「そこにね」
「まあ俺もだけれどな」
「だろ?何でそんなこと聞くのかな」
「確かめたいことがあってな」
それでだというのであった。
「それでな」
「うん、それで?」
「御前大学でも剣道部か」
「そのつもりだけれど」
実は彼は高校、いや中学の頃から剣道部であった。その腕はかなりのもので全国大会でもいいところをいっている。そこまでの腕なのだ。
「それはね」
「そうか。御前その外見でも強いしな」
見れば背はかろうじて一七〇を超えた位で細い身体をしている。それだけ見るととても剣道で全国大会までいったとは思えないものだった。しかしなのだった。
「握力も腕力も凄いしな」
「そんなに凄いかな」
「ついでに言えば足腰も
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