第九章
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第九章
「デートにも誘ってくれたし」
「そうだったの。あんたがねえ」
「何か疑わしいって目だな」
本当にお母さんは今智哉をそんな目で見ていた。何故か純に対するよりも彼に対する方がきついのが彼にとっては不思議だった。それに対して純には至って優しい。優しいどころかまるで何年どころか生まれてから知っているような接し方なのであった。
「俺がそんなに」
「はい、話はここまで」
またしても強引に決められてしまった。
「あがりなさい。もうスパゲティできるから」
「あっ、スパゲティなんですか」
「そうよ。スパゲティにピザ」
ピザまであるという。智哉はこれは初耳だった。
「あるから。さあ早く」
「わかりました。じゃあ智哉君」
純の方から明るく誘ってきたのであった。本当に何処までもお母さんとこの純のペースで話が進んでいっていた。
「あがりましょう」
「あがりましょうってここ俺の家なんだけれど」
「あれこれ言わない」
またお母さんの声が智哉にかかる。
「あがって早く食べなさい。いいわね」
「わかったよ。それじゃあ」
こうして自分の家なのに何故か肩身が狭くそのうえあれこれ言われながらあがる智哉であった。彼と純が向かい合ってテーブルに座るとすぐに。そのスパゲティとピザが置かれたのだった。
「あっ、このスパゲティって」
「どうかしら」
お母さんは声をあげる純の側に来て誇らしげに微笑んでみせた。
「ネーロ。烏賊のスミを使ったスパゲティ」
見ればスパゲティは真っ黒だった。さながらインクをかけたようである。そこにスライスしたトマトと烏賊の切り身、それにガーリックがある。その三つを炒めてその上に烏賊スミをかけて熱しそれから茹でたパスタにその烏賊スミソースをかけたものである。
「これははじめてかしら」
「いえ」
だがここで。純はまたしても満面の笑顔でお母さんに応えるのであった。しかも同時にピザも見ている。ピザはベーコンと海老、それに貝を乗せたシーフードメインのピザである。お母さんの好きなスパゲティとピザはこの二つなのである。
「私このスパゲティ好きなんです」
「あらっ」
「何と」
今の純の言葉を聞いてお母さんも智哉も驚きの声をあげた。お母さんは喜びの声であり智哉は純粋に驚きの声であった。これだけの違いがここでもあった。
「好きなの。このスパゲティが」
「家じゃいつもこれです」
この言葉を聞いてそれこそ顎が外れんばかりに驚く智哉であった。まさかと思ったがスパゲティまで。偶然にしてはあまりにも出来過ぎであった。
「ピザも。シーフードピザが好きで」
「そうだったの」
「どちらもそのまま私の家でも食べます」
何とこうなのだった。
「まさかそれがここでも出るなんて。何て言えばいいか」
「じゃ
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