第五章
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て」
「地震、雷、火事、お母さん」
「そういうこと。わかってるじゃない」
この家ではそうなのだった。
「だからお母さんの言うことは聞かないといけないのよ。わかった?」
「だからラーメンは豚骨でうどんは鳥なんばでカレーはチキンなのか」
「そういうことよ」
妹はしれっとして答える。
「ハンバーグには上にバターを乗せてね。コーヒーはアメリカン」
「ついでに野球は阪神か」
「そう、全部決まってるのよ」
「そりゃ俺も巨人は嫌いだ」
彼だけでなく一家全員アンチ巨人である。従って新聞は読売ではない。
「あんなチームはどんどん惨めに負けろ」
「これに関してはお母さんはあまり関係ないみたいね」
「巨人が負けることは日本にとって非常にいいことだ」
実に正論であるがこのタイミングで言う言葉とはいささか言えないものだった。
「巨人が負けて喜ぶ人間がいる。喜べばそれだけ元気が出る」
「だから皆頑張れると」
「そうそう、そういうことだよ」
こう妹に述べるのだった。
「わかってるじゃないか」
「けれど野球は阪神にはつながらないんじゃないの?」
「勝っても負けても華がある」
やっと話がまた噛み合いだしてきた。
「どんな鮮やかな勝ち方でもどんな惨めな負け方でも絵になる。そんなチームは阪神だけだろう?」
「その通り」
やっとお母さんが頷いてきたのだった。
「わかってるじゃない。偉いわ」
「これだけはお母さんに言われるまでもなかったけれどな」
「けれど後は違うのね」
「ああ、食い物に関してはな」
また話が食べ物に戻った。
「とにかくうちの家はそれで決まってるんだな」
「そうそう、明日だけれど」
ここぞというタイミングでまたお母さんが言ってきた。
「明日はオムライスよ」
「おっ、いいね」
お父さんが最初に笑顔で声をあげた。
「それでオムライスはやっぱり御飯をカレーにしてそこから」
「そうよ、カレールーをかけてね」
にこりと笑ってお父さんに応えるお母さんだった。
「それであさってはそれでカレーよ」
「いいねえ、いつも通りのいい流れで」
お父さんは明日のオムライスと明後日のカレーのことを聞いてもう満足していた。どうやらその二つだけで充分の人らしい。
「カレーはチキンでね」
「それで行くわ」
「お兄ちゃんもそれでいいわよね」
「勿論」
ここで声をかけてきた妹に対して答える智哉だった。
「オムライスは特大でな」
「ええ、勿論よ」
最後にお母さんが笑顔で答えた。夜はいつもそんな話をしている。この夜の次の日智哉は純と一緒に学校の食堂で昼食を採っていた。智哉は鳥なんばうどんと親子丼を食べ純はオムライスを食べていた。見るべきは純がここで食べているオムライスであった。しかも彼女はついで
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