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ストライク・ザ・ブラッド 〜神なる名を持つ吸血鬼〜
神意の祭典篇
38.闇夜の襲撃者
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上がる真っ赤な瞳。鋭く尖った牙。
「顕現しろ、“
黒妖犬
(
ブラックハウンド
)
”!」
漆黒の獣が古城たちめがけて襲いかかる。しかし、古城は五体の眷獣の召喚で魔力が使い果たしている。
「先輩ッ! 避けてください!」
銀の槍を握った雪菜が襲いかかってくる漆黒の獣へと刃を突き立てる。
しかし、想像以上に漆黒の獣の動きが速い雪菜の未来視を持ってしてもその動きを完璧には捉えられない。
「獅子の神子たる高神の剣巫が願い奉る──」
雪菜が祝詞を紡ぎ、“雪霞狼”の刃の魔力が増幅されていく。
「破魔の曙光、雪霞の神狼、鋼の神威をもちて我に悪神百鬼を討たせ給え!」
漆黒の獣の身体を銀の刃がわずかに捉える。
グォォォ、苦痛にゆがむ咆吼を放ちながらも漆黒の獣は古城へと鋭い爪を突き立てる。
「先輩!」
回避することもできずに漆黒の獣の爪が古城の身体を薙いだ。突然の浮遊感が古城を襲う。
何があったのか一瞬理解することさえもできなかった。しかしすぐに背中へと襲いかかってきた衝撃波に失われかけた古城の意識が保たれる。
激痛を越えてもはや痛覚などない。身体が熱いという感覚しかないのだ。
「先輩! 暁先輩──ッ!」
雪菜が倒れる第四真祖に取りすがって呼び続ける。
「に、逃げ、ろ……ひ、姫、柊……」
わずかに紡ぎ出された声が雪菜へと届いたのだろうか。
「それじゃあな。第四真祖、剣巫」
霞む視界に金髪の少年の不敵な笑みと蛇の母体から無数の蛇が出現するのを捉える。
雪菜だけでも護らなければならない。不死身の第四真祖と違い雪菜があれほどの攻撃を受ければ死んでしまう。
感覚を失った古城は右手を動かし、眷獣を出現させようとする。しかし古城の呼びかけに眷獣たちは応えない。
暴走してでもいい、だから応えろよ!
その間にも無数の蛇が古城たちへと襲いかかる。雪菜は古城へと覆いかぶさって逃げようとはしていない。
無数の蛇たちが襲いかかる──
「──“
優鉢羅
(
ウハツラ
)
”! “
跋難陀
(
バツナンダ
)
”!」
歓喜に満ちたような声が響いた。夜空を焦がすほどの膨大な魔力が古城たちの前へと吹き抜けた。青く輝く蛇と全身禍々しい刃で武装した巨大な蛇だ。
これほど膨大な魔力の眷獣を操れる使い手に古城は心当たりがあった。
蛇の眷獣を操り、戦場を愉しんでいる“戦王領域”の貴族だ。
「困るな。ボクの古城にちょっかいを出すのは」
両眼を真紅に輝かせて、闇の中に現れたのは、美しい金髪の青年。純白のコートに身を包んだディミトリエ・ヴァトラーだ。
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