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ストライク・ザ・ブラッド 〜神なる名を持つ吸血鬼〜
神意の祭典篇
38.闇夜の襲撃者
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しかし先ほどの地面の欠片のせいで力を入れるだけでも激痛が走り、バランスがとれない。
「若虎──ッ!」
土煙の中央に穴があく。そこに現れたのは、爆発的な魔力の波動を纏い左手がターゲットの距離を測り、右手が後方へと引かれている。その技は、相手の一撃で沈黙させるほどの威力を持つ若き虎の牙。
回避することはできない。防御のための魔力を纏わせる時間さえない。
少女は左手を右手へと引き寄せて魔力を増幅させた両の掌底が彩斗の腹部へと抉りこまれる。
「グハァ──ッァ!?」
激痛とともに彩斗の身体は数メートル先の木へと叩きつけられる。
確実に内臓の幾つかは完全に機能を失っているだろう。これこそが“虎皇神法”の真の力なのだ。外部からではなく内部から身体へと攻撃を加えていき、吸血鬼の回復機能にも影響を与える。
霞む視界の中、茶髪の少女がゆっくりとこちらへと近づいてくる。
「少しは出す気になりましたか、“
神意の暁
(
オリスブラッド
)
”」
「……いや……全く」
「……そうですか」
茶髪の少女の表情はもはや見えない。しかしその声はどこか悲しげに聞こえた。
この少女はまさか誰も傷つけたくないのではないだろうか?
「それじゃあ死んでください」
「悪りぃな……こちとっら不死身なんだよ」
痛みに堪えながらも彩斗は不敵な笑みを浮かべる。不老不死である彩斗は死ぬことはできない。どれだけの苦痛を受けようともどれだけ死にかけようとも死ぬことはできない。死ねないのだ。
覚悟を決めて彩斗は目を閉じる。
これまでとは比べものにならないくらいの魔力が大気へと放出される。
「虎皇雷撃──ッ!」
少女の叫びとともに大気に放出され続けていた魔力が一点へと集中していく。
その攻撃を受ければただではすまないであろう。しかし今の彩斗に彼女の攻撃を回避する術など残っていない。
その時だった。夜風に揺れる木々の音に紛れて聞き覚えのある少女の声が聞こえた。
「煉獄炎舞──ッ!」
強烈な二つの魔力の塊が激突し大気を震わせる。凄まじい衝撃波が周りの木々をなぎ倒し、崩壊している修道院の壁を破壊する。
その衝撃波は真祖クラスの眷獣の魔力の波動に匹敵するほどだ。
「大丈夫、彩斗君!?」
聞き慣れた少女の声。彩斗は霞む視界に黒髪の少女が映る。
「よ、よう……逢、崎……」
不器用な笑みを獅子王機関“剣帝”の少女へと向けた。
「なんでこんな無茶するの!? バカ!?」
「バカとはなんだよ……こっちだって必死だったんだ……」
彩斗は木に背をあずけながら立ち上がる。吸血鬼の回復によってわずかではあるが身体中に突き刺さっていた地面の欠片の傷は癒された。
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