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ストライク・ザ・ブラッド 〜神なる名を持つ吸血鬼〜
神意の祭典篇
38.闇夜の襲撃者
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の痛みが治るのには時間がかかるであろう。
「なんでテメェがその武術をつかってやがる」
傷を負った左腕を押さえながら彩斗は茶髪の少女を睨みつける。
先ほどの構え、動き、そして“瞬虎”という技。その全てが彩斗が感じていた
既視感
(
デジャブ
)
を形作っていく。
あの武術は彩斗の妹、緒河唯が操る魔族と戦うための武術にして不老不死の吸血鬼さえ戦闘不能に追い込む対魔族武術“虎皇神法”だ。呪力を纏わせた拳や足で的確に相手の急所をつき、全ての攻撃を受け流す攻防自在の武術。
茶髪の少女はやはり顔色一つ変えずに再び構えをとる。
「それは私がこの武術の会得しているからです」
この少女が操る武術が“虎皇神法”だというならまだ幸いだ。彩斗には唯の武術を見てある程度の技の動きは理解している。それなら彼女の攻撃をかわすことができる。
「来いよ、女!」
彩斗は右手の指を動かして挑発する。
「わかりました」
わずかに眉が動いたが顔色を変えず茶髪の少女が少し膝を曲げて体勢を落とす。
あの構えから放たれる技は、魔力の攻撃を受け流すと同時に強烈な一撃を流れるように放つ“
流虎
(
りゅうこ
)
”だ。
沈黙が無灯火の修道院に響いた。木々が夜風で揺れる。
その沈黙を破ったのは意外にも茶髪の少女だった。
「どうして眷獣を使わないのですか?」
「どうしてか……」
彩斗は不敵な笑みを浮かべて彼女の問いに答える。
「悪ぃけど俺は女に本気を出すほどガキじゃねぇんでな」
「そうですか……」
少女は悲しそうにも嬉しそうにも見えるなんとも言えない表情をみせる。そして彩斗へと敵意全開で睨みつける。
「それなら引きずりださせるまでです」
茶髪の少女が地を蹴って彩斗の視界から一瞬で消える。
少女は数メートルはあった距離を一瞬にしてゼロとし、彩斗の懐へと現れた。相手のと距離を瞬時に詰め、魔力を纏った強烈な一撃を放つ“瞬虎”だ。
わかった技なら回避することも容易いこと。
彩斗は吸血鬼の筋力を解放し、後方へと飛び退いた。
「その程度を読めないと思いましたか?」
冷静なその声に彩斗は身を震わせる。そして少女の狙いに気づいた。
しかしその時には、もう回避する手段など残されていなかった。
「
影虎
(
かげとら
)
──ッ!」
少女の魔力を纏った細い足が地面へと叩きつけられる。凄まじい衝撃に巻き上げられた地面の欠片が無数の弾丸となり彩斗へと襲いかかる。
なす術もなくその攻撃を彩斗は受ける。
身体のあちこちに地面の欠片が突き刺さる。
「まだ終わりじゃないですよ」
巻き上げられた土煙の中から茶髪の少女の声が響く。
直感で彩斗はまずい!、と全身が凍った。
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