第4話「怖いものは人それぞれ」
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してたんだな」
きれいに掃除された廃病院のとある角部屋。明るい照明と生活に困らない程度の家具が並んでいる。
そこには銀時と双葉以外に数人の子供と、坊主頭の老人が座っていた。
実はこの老人、ホームレスでこの廃病院に住んでいたのだ。普段から優しい老人で、子供たちはこの人のため幽霊話をデッチ上げていたという。
「うん。若いカップルが遊び半分でココに来てお爺さん怖がらせるから」
「実際効果はテキメンじゃったよ。カップルは殆ど来なくなったからの」
「へっ!だと思ったぜ。俺は最初からわかってたよ。幽霊じゃないって。騒いでたの、アレ、盛り上げてただけだから」
銀時の白々しい言い訳に、もはや双葉は冷めた視線を横目で送るだけだった。
「あの〜ココのことなんだけど…」
「安心しろ。適当に誤魔化して、ココには誰も立ち入らないようにしておく」
上目遣いの男の子に、双葉は無愛想に答える。冷めた口調だが、彼女の返事に子供たちと老人は嬉しそうに顔を見合わせた。
「けどバアさんだけで神楽帰しちまうたァ、お前らガキのくせに手ェこんでんな。マネキンでも立ててたのかよ?」
銀時の一言に、子供たちは首を傾げる。互いに顔を見るが、頷く者はいない。
「お婆さん……知ってる?」
「ううん。お婆さんなんて知らないよ」
「へ?」
「ああ。あのお婆さん今日も出たんじゃな」
その一言に双葉以外の全員が硬直。皆の視線が老人に集中する。
この先はとても嫌な予感がする。
そんな銀時の不安をよそに、老人は話を続けた。
「いやね、十年前の大火事に巻き込まれたお婆さんが、今もこの病院を歩き回ってて……」
老人が恐ろしい事実を穏やかに語った途端――子供たちが悲鳴を上げて逃げるよりも先に、銀時は気絶した。
* * *
「……ん」
ふと目が覚める。けれど、何かおかしい。
自分は歩いていないはずなのに、風景が勝手に動いている。まだ夢見てんのか、とおぼろげな意識で考える。
「やっと起きたか」
冷めた声が聞こえたと思えば、目と鼻の先に銀髪があった。
スクーターを片手で押し、反対の腕で双葉は銀時を背負って夜道を歩いていた。
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「情けねェな。妹におんぶされるなんて」
「全くだ」
少しはフォローしろと思ったが、図星なので反論できない。
目覚めたのに、双葉は銀時を下ろそうとしない。未だ背負い続けている。
妹におんぶされている兄というのは、みっともない。
夜道には誰もいないとは言え、恥ずかしい。それに身長差のせいで、足がズルズル引きずられている。
「おい。もういいって」
「腰が抜けてるんじゃないのか?」
皮肉げな微笑。正面を向いてるから見えないが、きっと双葉は蔑んだ表情をしてるんだろう
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