第3話「ポジティブは現実逃避の裏返し」
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真面目に聞いている事を語っていた。
「何があったんだよ」
銀時は駆け付けた以前の出来事をあまり聞いていない。聞かない方がいいと思った。
けれど、あの異常な怯えぶりを見ては気にせずにいられない。
「兄者こそ、私に何をした?」
「そりゃ……」
思わず口ごもってしまう。
銀時が駆けつけた時、双葉は高杉の策略で飲まされた薬でしびれて動けなくなっていた。
そして、助けるためだったとはいえ……高杉から渡された解毒薬を飲ませるために、銀時は実の妹とキスをしてしまった。
「言えないだろ。それと同じ事だ」
皮肉げな笑みをふわりと浮かべ、双葉は歩き出した。
「おい」
「なぁ、兄者いつまで続ける気だ?」
さっきの出来事を誤魔化したいのか、唐突に話題を変えてくる。
一瞬戸惑ったが、確かに双葉の言う事ももっともだった。もうだいぶ廃病院の中を歩き回ったが、さっきから似たような事の繰り返しで全然進展しない。
それにこの態度からすると、もうあの一夜については深入れしない方がいい。これ以上空気が淀むのも気まずいので、銀時は妹を追い越して質問に応えた。
「決まってんだろ。オメェのビビり顔見るまでだ」
依頼はどうなった、と双葉は思ったが、面倒なのでツッコまなかった。
「ま、私はずっとココにいようと別に構わないが」
「……双葉、お前ホントに怖くねェのか?」
この廃病院に次々と起きた怪現象に、双葉がビビった様子は少しもない。
仮に本物の幽霊が目の前に現れても、この妹には通用しないかもしれない。さっきのチャッキーがそうだった。
思えば双葉が幽霊に怖がっている所を見たことがない。夏祭のお化け屋敷や肝試しは見るのも嫌だったし、そのせいで双葉と一緒に入ることはなかった。
「別に。幽霊なんて所詮は人の《戯言》だ。私は見えないモノより、目に見えるモノの方がよっぽど恐ろしい」
「見えるモン?」
「あえていうなら『人』か。人が同じ人間を殺すコト。それに快感を持ち、喜ぶ奴が一番恐ろしい」
「それって……」
銀時は知っている。
闘いの最中で目覚めた感情と感覚。
血の味を誰よりも悦び、殺しを楽しんでいた仲間を。
それは今後ろにいる――
「フギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!」
突然悲鳴を上げる銀時。
双葉は兄が驚愕している方向を懐中電灯で照らす。
病室の片隅にあるベットの上に、カナヅチを手にした血まみれの少女が立っていた。
【タスケテ…クルシイ…コロス…】
「これ、これ、コレェ!」
震える身体で、血まみれの少女を指差し訴える。だが、やはり双葉の表情は何一つ変わっていない。
「カナヅチか。確かに硬度は高いが、簡単に避けられるぞ」
そのズレた発言にブチリと図太
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